成尾鉄朗 医師 (なるおてつろう)

医療法人司誠会 野上病院

鹿児島県鹿児島市小松原1-4-1

  • 心療内科
  • 院長

心療内科 内科

専門

心身症、特に摂食障害、循環器心身症、消化器心身症、と気分障害(単極性)、不安障害

成尾鉄朗

成尾鉄朗医師は、鹿児島大学医学部在職中は心身症、特に摂食障害の病態と治療の研究を専門として活動。これまでに厚生省特定疾患神経性食思不振症研究班班員や厚生労働省精神・神経疾患研究委託費研究分担員、鹿児島市医師会地域医療連携検討委員会メンタルヘルス対策部会副部長なども務める。摂食障害合併の患者に対しては行動療法的治療が主体。その他、理学療法部門と提携し理学治療や個人心理療法、集団心理療法、ヨーガ、フラワーセラピーなどを組み合わせる。重症患者については入院治療も行っている。

診療内容

治療のスタンスについては「患者本人が病をひとつの経験として社会のなかで自己成長できるよう、医師は身体的・心理的側面から治療的に介入しつつ、我慢強く支えることが肝要」と語る成尾医師。「長年、摂食障害の患者さんの治療にどっぷり漬かったおかげで、この治療スタイルを確立できました。根は短気な私ですが、治療は急ぎません(笑)。じっくり行いますので、お急ぎの方には合わないかもしれませんね」(成尾医師)
摂食障害合併の患者に対しては行動療法的治療が主体だが、その他の治療法として、同院理学療法部門と提携した理学治療(徒手マッサージ、針)や個人心理療法、集団心理療法、ヨーガ、フラワーセラピーなども組み合わせるという。また、重症患者については入院治療も行っている。
摂食障害のなかでも行動療法の対象とされるのは、神経性食欲不振症患者が大半。神経性過食症患者に対しては、通院治療では食行動が自己制御できない場合や、不食が深刻になった場合などのケースに限って行うことがある。また、ここでの行動療法とは、一般にいわれる「行動に大幅に制限をかけ、アメとムチ方式で厳しく制御する単純で非人間的操作術」という単純なものではない。刺激統制やオペラント強化療法、罰刺激を中心にしつつ、認知療法や家族療法、対人関係療法などの技法を部分的に含んだ、統合的な治療構造のことを指すという。
具体的な治療方法について説明してゆく。典型的な神経性食欲不振症患者には、ダイエットによって生じた心理・認知的、社会的、身体的障害のほか、治療抵抗性を強固にさせる強烈な肥満恐怖が特に強くみられる。そのため、まずは肥満恐怖を悪化させる要因となっている栄養状態を早く改善させることが必要である。入院を要する重症例については、体重増加や食事摂取量の増加に対してオペラント強化(後述)を与える行動療法的枠組みを設定し、食事や体型に対する不適切な思考や認知と、問題回避などの不適切な食行動様式を修正することが、治療前半のポイント。治療の後半においては、対人関係やセルフ・コントロールに対するスキルの向上、家族関係の修正を追加していくという。
神経性食欲不振症重症例の治療の一般的な流れは、以下のとおりである。
1)行動観察…入院後約1~2週間は、身体的検査と食行動を中心とした日常行動を観察。症状の特徴・親子関係・障害の程度・病気に対する態度などを分析し、対処法を検討する。
2)刺激統制…続いて、家族・友人との面会や電話・文通などによる連絡を遮断することで、症状が続く原因となる要素を一時的に除去する。
3)オペラント強化…さらに、患者にとって「望ましい行動」の価値を高めるため、入院生活における娯楽――ラジオ・テレビ・読書・電話・病棟外散歩など――を一時的に禁止し、午前・午後ともベッド上で安静時間を設ける。また、患者の心理的飢餓動因を高め、摂食に対する心理的抵抗や恐怖を徐々になくすため、食事量を1日800~1,000Kcalぐらいに落とす。摂食状態が順調で、週1回の体重測定で0.5~1.0kgの体重増加があれば、それまで禁止していたものを段階的に許可していく。その順序は基本的に、ラジオ→読書→安静時間短縮→テレビ→散歩→電話→外出→面会→外泊。同時に、与えられた食事を全部食べたときには、その都度ほめたり、話し相手になる機会を増やすなど、社会的賞賛や社会的関心の強化を与える。
4)行動論的カウンセリング…患者の病歴・日記・談話・行動観察・グループカウンセリングの内容から、患者の社会的発達の未熟さに基づく誤った考え方・問題のとらえ方・誤った行動様式について知り、これを修正。望ましく変容した際には支持・注目を与え、健全な発達を促す。
5)社会的技術訓練…入院治療後期には社会的技術訓練の一環として、お茶の配給当番を行うことも取り入れている。これによって対人関係の技術向上や相手からの感謝を感じられ、人間関係の構築に有効に作用する。
6)短期間のやり直し…長期慢性患者や重症患者のなかには、まじめに治療に取り組んでいるように見えても、体重増加が停滞するケースもある。そうした場合、患者は隠れて嘔吐をしたり残食するなどの不適切な行動を行っているもの。それらを早期にやめさせるために、猶予期間を設けたうえで、短期間に限り治療をはじめからやり直す。
7)到達目標達成…患者の身長や年齢も考慮するが、1日の摂取カロリー1800~2000Kcalが治療のひとつの到達目標。患者の体重が標準体重の-20%以内に増加することが、退院の目安である。当然ながら、認知や社会適応性においても修正がなされていることが重要な条件。なお、前思春期に発症した患者は親子関係や社会適応上の問題改善も重要であるため、親子の面会や会食の機会を早めに設定するなどの配慮を行う。また特に重症患者の場合、入院中には行動面・認知面の改善が認められても、退院後に標準体重の8割近くまで回復した頃から再び摂食・肥満恐怖が強まり、同時に社会復帰への恐怖も顕在化するケースが多い。このため、家族の協力を得たうえで3~6ヵ月間のハビリテーションが必要となってくる。
「治療に際しては、オペラント強化子の役割をはたしているキーパーソン(家族など)が、治療補助者として治療に参加することが重要」と成尾医師。
患者が依存的な態度や攻撃的態度(家出や自殺のまねごとなど)をとった際、キーパーソンが患者の不適切な要求を受け入れたり、優柔不断な態度をしてしまうと、患者の症状を強化することにつながってしまうからだ。そのためにも家族が病態のメカニズムを十分に理解し、治療補助者としての自覚をもって治療に参加し、対処方法を理解することが必要だという。
「そのことで入院期間も短縮でき、退院後の家庭生活でも治療効果を維持することができるのです」と成尾医師は言葉を締めた。

医師プロフィール

1983年 鹿児島大学医学部 卒業、鹿児島大学医学部第一内科へ
1987年 愛媛大学医学部薬理学教室研究生
1989年 鹿児島大学医学部第1内科医員
1996年 マックス・プランク精神神経研究所(ミュンヘン)留学
1999年 鹿児島大学医学部第一内科助手を経て附属病院心身医療科講師
2001年 鹿児島大学医学部・歯学部病院心身医療科助教授
2003年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科学社会・行動医学講座助教授
2006年 司誠会野上病院副院長
2011年 鹿児島市医師会地域医療連携検討委員会/メンタルヘルス対策部会副部長
2012年 司誠会野上病院院長