恐怖症(恐怖症性不安障害)〔きょうふしょう(きょうふしょうせいふあんしょうがい)〕 家庭の医学

 状況や人、動物、病気など特定の対象を怖がるのが恐怖症です。怖いと感じる恐怖感は、頭では不合理だとわかっていても、自分でコントロールできません。あまりに不安が強いために「気が狂ってしまうのでは」という気分になることもあります。からだのほうでも、動悸(どうき)、発汗、ふるえ、呼吸困難感、あちこちの痛みなどを伴います。
 しかし、症状が起こるのは特定の状況だけか、そのことについて考えるときだけで、あとはふつうに生活できます。おそれる対象から恐怖症は次のように分けられます。

■社会恐怖
 対人恐怖と呼ばれることもあります。人前で話すなど、他人の注目を浴びたり恥ずかしい思いをする行動をおそれ、そのような状況を避けようとします。またどうしても行動せざるを得ないときは、強い不安や苦痛を感じ、赤面、からだや手のふるえ、動悸などがあらわれます。恥ずかしいと思う理由として、自分の表情、体臭、からだのかたちなどが気になっていることもあります。

■広場恐怖
 雑踏、慣れない場所、自宅から遠く離れたところなどで恐怖感があらわれます。パニック発作(身体症状を伴う突然の強い不安)が同時に起こることが多く、発作をくり返すうちに、そのような場所に出かけることを極度におそれ、回避するようになります。

■閉所恐怖・高所恐怖など
 広場恐怖と同じような症状が、エレベーター、乗り物、トンネル、高層ビルなど特定の場所で起こるものです。
 その他特定の動物を怖がる動物恐怖、がん、エイズなどを怖がる疾病恐怖、雷恐怖、暗闇恐怖など多くの種類があります。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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