重度ストレス反応と適応障害〔じゅうどすとれすはんのうとてきおうしょうがい〕 家庭の医学

■重度ストレス反応
 重度ストレス反応とは、通常の生活では体験し得ないような、なみはずれた脅威(地震などの自然災害や暴行を受けるなどの人的災害)を体験した場合に生じます。反応のしかたによって2つの場合に区別されます。

・急性ストレス反応
 これは体験後ただちに症状が始まり、長くても1カ月以内におさまるものをいいます。症状としては、全般性不安障害のところで説明したような精神的な不安やからだにあらわれる症状がみられます。また悲嘆や絶望、精神的混乱(場所をまちがえたり目的がはっきりしないような行動をとる)、注意力の障害などが出る場合もあります。これらの症状は、時間とともに軽くなるのがふつうです。

・心的外傷後ストレス障害(PTSD)
 前項で触れたような症状がなかなかおさまらなかったり、すこし時間を経てから新たな症状が加わったりする場合を心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder:PTSD)いいます。症状としては、そのときの体験が生々しくよみがえるフラッシュバックや体験を夢に見たりするもの(再生症状)、日常生活で閉じこもりがちになったり体験を想像させるような場所を避けたりするもの(回避症状)、ちょっとしたことでいらいらしたり、びっくりしたり、また不眠になったりするもの(過覚醒〈かくせい〉症状)などがあります。PTSDは阪神・淡路大震災(1995年)、地下鉄サリン事件(1995年)、ペルー日本大使館人質事件(1996~97年)などにより社会的な認知が急激に進みました。最近では、児童虐待を体験した人々にみられる症状として注目されています。また近年の東日本大震災をはじめとする災害が多発するなかで、災害時のこころのケアがますます重要になっています。

■適応障害
 前項であげたような異常な体験ではなく、日常起こりうるような生活上の変化やストレスを経験した場合に生じる状態です。肉親の死、失恋、就職や受験の失敗、失職などです。状態としては軽度の抑うつ、不安、心配、仕事や家事の障害などがみられます。また青年の場合は攻撃的になったり、小児の場合は退行現象(赤ちゃんがえり)がみられたりします。ストレスの状況にもよりますが、一般的には適応障害は長く続くものではありません。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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