脳膿瘍〔のうのうよう〕 家庭の医学

[原因]
 脳膿瘍は頭蓋骨(乳様突起、副鼻腔〈ふくびくう〉など)の感染から直接脳内にひろがるか、頭蓋骨折の感染によるか、あるいは他臓器の感染源から血液を介して感染がひろがって生じます。なかでも多いものは気管支拡張症肺膿瘍など肺の感染巣からの感染です。病原菌としては、ブドウ球菌、連鎖球菌、腸内細菌などの嫌気性菌がふつうにみられます。

[症状]
 脳膿瘍の症状は、頭痛、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)ではじまることが多いのが特徴です。時にはけいれんを生じます。体温は正常か微熱がある程度で、脈拍や呼吸数は正常のことがふつうです。膿瘍が大きくなると片まひ、半盲、失語症などが出現します。

[検査]
 中耳炎、副鼻腔炎、心臓や肺に感染症をもつ人がけいれん、片まひ、脳圧亢進(こうしん)症状(頭痛、嘔気〈おうき〉、嘔吐)を示してきた場合にはすぐにCT(コンピュータ断層撮影)検査をします。CTによって特徴的なリング状の造影効果をみとめれば診断に有用です。

[治療]
 適応のある抗生物質を大量に投与します。脳膿瘍は基本的に脳外科で治療すべき疾患であり、機を逃さずに開頭して皮膜を破り、膿瘍内を抗生物質で洗浄します。治療をしなければ死にいたる疾患です。後遺症としては膿瘍の再発、てんかん、局所神経徴候(片まひなど)がしばしば残ります。

(執筆・監修:一口坂クリニック 作田 学)