のどの病気の症状 家庭の医学

■痛み
 多くは炎症による粘膜の痛みです。かぜ、咽喉頭(いんこうとう)炎、扁桃(へんとう)炎(扁桃腺炎)、口内炎に多くみられ、咽頭喉頭の腫瘍でも、炎症や圧迫により起こります。単なるのどの痛みでも、心筋梗塞などの放散痛やがんが隠れている場合もあります。ヘルペスウイルスなど感染による痛みは激しく、ヘルペスは左右いずれかのアフタ水疱など炎症ですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では左右問わず両側に発症するため、さらに痛いといわれています。

■発熱
 炎症を起こした場合の症状です。特殊な場合を除き、できものなどでは感染の併発、炎症や進行をしなければ起こりません。子どもの場合、熱性けいれん(ひきつけ)などが起こることがあります。このときは、ただちに専門医に診てもらってください。また、嘔吐(おうと)を伴う乳幼児の場合、髄膜炎なども考えられます。

■飲み込みにくい
 のどに異物がある場合や、のどに炎症が起こっている場合にものが飲み込みにくくなります。そのほか咽喉頭、舌や食道のがんのサインかもしれません。また、脳梗塞脳出血などの脳血管障害や、感染に伴う神経のまひでは、突然むせやすくなったり、ものが飲み込めなくなる場合があります。飲みにくい場合、つばが口の中にたまり、よだれが出てしまう症状をうったえる場合や、呼吸が苦しいなどの症状をうったえる場合もあります。

■せき
 異物や誤嚥(ごえん)、炎症などにより、喉頭や気管の粘膜が刺激されて起こります。たんや炎症そのものも刺激となり、せきが出る場合があります。薬の副作用で出る場合もあります。せきで大切な役割は、異物やたんを気道から排出し気道をきれいにして、肺などの呼吸器やからだを守ることです。

■たん
 多くは後鼻漏(こうびろう)といって、鼻みずがのどに回って出てきます。せきを伴うたんでは、喉頭や気管、肺の炎症も考えられます。黄色や緑など色のついたたんでは、感染を伴う鼻みずがのどから回ってくる場合と、気管から排出された場合によくみられます。

■出血
 せきといっしょに血がまじったたんが出た場合は気管・肺・喉頭からの出血が、嘔吐に伴う出血はのどだけでなく、食道・胃からの出血も考えられます。夜間に鼻がつまって口呼吸などで口の中や咽頭が乾いて、鼻の奥の上咽頭などから出血する場合も考えられます。

■呼吸困難
 息を吸うときもゼーゼーと音が出る場合、気道(空気の通り道)が狭くなったときのサインです。乳幼児の場合、かぜをこじらせたときに仮性クループといって、激しいせきを伴い、息を吸うときも声が出るぐらいに、声帯と声帯直下の気管がはれて、ゼーゼー苦しむことがあります。明けがたの冷える時間帯に多く、その場合はただちに大きな病院を受診してください。
 炎症がひどくなったときや異物がのどにひっかかったときにも起こります。乳児であきらかな原因や炎症、熱もなくゼーゼーしている場合、先天性の喉頭の発育不全や奇形の場合もあります。多くは成長とともに自然に治っていきますが、まずは医師に相談しましょう。

■嗄声
 声がかれることを嗄声(させい)といいます。おしゃべりのしすぎや、声をたくさん使ったあと(声の濫用〈らんよう〉)や声帯の炎症で起こります。やけど、薬物を含むさまざまなアレルギーや咽頭喉頭がんなどで急激に進行すると、喉頭浮腫(声帯がはれる)で呼吸困難になることもあります。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、口腔、咽頭、喉頭の激しい炎症が起きる場合が多く報告されました。その後に新型コロナウイルス感染症が治っても、声が出にくいなどの症状が残る人もいます。原因の多くは声を使用しなかったことによる声帯の萎縮や、痛みへの恐怖による心因性の発声障害です。このため社会生活に復帰して会話によるコミュニケーションが始まれば徐々に治ります。ただ、続くようなら一度耳鼻咽喉科を受診してみてください。異常がなければどんどん声を出すようにしましょう(音声訓練は長寿社会の耳鼻咽喉科の項の図参照)。

■声のふるえ
 のど全体がふるえる病態(声の振戦〈しんせん〉)と、声帯が発声するときにふるえる病態(けいれん性発声障害)があります。声の振戦はパーキンソン病や薬の副作用、脳梗塞、甲状腺機能亢進(こうしん)症などで起こります。左右の声帯が発声時にけいれんする場合はけいれん性発声障害が考えられます。治療は、音声訓練や薬物療法、ボツリヌストキシンの注射、DPSといって脳に電極を入れて刺激する治療などさまざまです。また過緊張発声といって、声が緊張してふるえる場合もあります。これらのふるえは耳鼻咽喉科医が言語聴覚士と協力して音声治療でリラックスさせる発声などで治ることもあります。

■くびのはれ
 炎症に伴って一晩で急激にはれる場合、流行性耳下腺炎や炎症の悪化を考えます。ほかに症状がなくてくびが徐々に1週間や1カ月ではれてきた場合、腫瘍も考えます。呼吸困難を伴う場合、のどの奥を腫瘍が圧迫していることがあります。

■咽頭・喉頭の異常感、異物感
 胸やけやげっぷを伴う場合には逆流性食道炎が多くみとめられます。炎症を伴う場合は見えないところのはれが考えられます。のどのがん(咽頭がん喉頭がん、甲状腺のがんやリンパ腫など)の可能性もあります。
 また、加齢による姿勢変化に伴い、くびが前屈して短くなり、脳に向かう頸動脈が、咽頭内(口の奥)で蛇行拍動する頸動脈の変位走行異常もあり、脳梗塞発生の原因とも考えられています。

(執筆・監修:独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 人工臓器・機器開発研究部長 角田 晃一
医師を探す