指屈筋腱損傷〔しくつきんけんそんしょう〕 家庭の医学

 指屈筋腱損傷には、開放創よる腱断裂(皮膚の外側から皮膚とともに腱が切れた状態)、皮下断裂、腱付着部の断裂があります。指屈筋腱には深・浅2本の腱があり、深指屈筋腱損傷ではDIP関節(もっともさきの関節)が、浅指屈筋腱損傷ではPIP関節(指先から2番目の関節)が屈曲できなくなります。
 開放性(傷のある)断裂では、組織の挫滅(組織の破壊状態)・汚染が強くないかぎり、すみやかに(できれば受傷当日)腱縫合(けんほうごう)をおこなうことが望ましいとされています。挫滅がひどいときなど、すぐに縫合できない場合は2次的に腱移植をおこないます。屈筋腱の損傷部位により難易度が異なり、PIP関節から手のひらのMP関節までの部位での損傷では、深・浅2本の腱が同時に損傷した場合は癒着などを生じやすいため、ノーマンズランド(no man's land)と呼ばれていました。以前は、一度に修復をせず2次的に腱移植がおこなわれていましたが、近年は鋭的損傷(断面がきれいに切れている)の場合は1次修復をおこなうことが多くなっています。
 術後療法も重要ですが、種々の方法があり、3週間固定する場合や、早期からの運動療法をおこなう場合(Kleinert法ほか)などがあります。皮下断裂、腱付着部断裂の場合も多くは手術的に再建をおこないます。

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