エボラ出血熱〔えぼらしゅっけつねつ〕 家庭の医学

 エボラ出血熱はエボラウイルスによってひき起こされる感染症で、スーダン、コンゴ、ガボンなどの中央アフリカとリベリア、ギニア、シエラレオネなどの西アフリカに存在し、日本にはありません。感染後、数日~3週間後、急激に発熱し、筋肉痛や頭痛があらわれます。その後、出血傾向が顕著となり、吐血や下血が生じ、死亡率も60~90%と高率です。
 2014年の西アフリカでの流行時には、欧米での感染例も報告されました。自然界から人への感染経路はわかっていませんが、感染したサルやコウモリなどの動物の血液、分泌物、排泄物、唾液などとの接触でも感染する可能性があります。人から人への感染例は、エボラ出血熱の患者の診療にあたった医療関係者でも多くみられ、患者の血液、体液、吐物・排泄物などへの直接接触によって感染します。
 このため、手袋やマスク、ゴーグル、ガウン、コンドーム(性交渉時)などの使用がすすめられます。

[診断][治療]
 確定診断には血液、咽頭ぬぐい液、尿からのウイルスの分離、ELIZA(enzyme-linked immunosorbent assay)法によるウイルス抗原の検出、PCR(polymerase chain reaction)法によるウイルス遺伝子の検出、血清抗体検査などがあります。特異的治療薬およびワクチンの開発がおこなわれていますが、現在のところ確実に有効な治療薬はなく、対症療法のみです。ワクチンは開発され流行地で使用されています。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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