療養者の楽な姿勢・からだの動かしかた 家庭の医学

 病気によっては、寝ていてもからだがだるく、つらいときが多いものです。また長時間、同じ体位で寝ていると、床ずれになることがあります。
 もっとも楽なのは、療養者本人が好む体位です。毛布や座ぶとん、タオルケット、枕などを利用して、できるだけ楽な姿勢が保てるように工夫をしてみましょう。
 また、全身マッサージをしてあげることも喜ばれます。
 なお、療養者が自分で寝返りができない場合は、床ずれ防止のため、通常のふとんやマットレスでは2時間に1回は体位変換(からだの向きを換えること)が必要になります。エアマットでは、療養者の皮膚が赤くなっていなくても、4時間に1回は体位変換をおこないましょう。寝たままからだを動かしたり、ベッドから車椅子へ移乗したりする際、療養者のからだを持ち上げることなく滑らせることで介護者の負担を軽減できる「スライディングシート」を活用するのもいいでしょう。
※スライディングシート:滑りやすい素材でできたシート

■仰向けに寝ている場合
 大腿(だいたい)部からかかとまで脚全体を乗せるように、大きめのクッションや枕、毛布を入れて、ひざを軽く曲げた体勢にすると、背中や大腿部の筋肉の緊張をやわらげることができます。足の先はつま先立ちのようなかたち(尖足〈せんそく〉)で固まってしまわないように、小さいクッションや枕を足の裏に当てるとよいでしょう。
 また、両上肢の下に枕などを置いて、軽く持ち上げると、肩や腕のだるさがやわらぎます。腕を枕などに乗せるときは、脚と同じようにできるだけ広い面が枕に乗るようにします。一部だけが枕に乗っていると、落ちないようにからだに力が入ってしまうことがあります。

■横向きの場合
 背中に枕や毛布を当てて、からだを支え、寄りかからせます。ひざを軽く曲げ、両ひざの間に小さめのクッションを入れます。

■上半身を高くした場合
 ベッドの頭の部分を上げたり、バックレストを置き、上半身を寄りかからせます。頭の部分が上げられないベッドやふとんの場合は、座椅子などもよいでしょう。座っているときは、ベッドの足の部分を上げたり、ひざの下に枕を入れてひざを曲げたりすると、楽な姿勢が保て、からだもずり落ちにくくなります。

※注:(1)では大腿部からかかとまでの脚全体を乗せられるとさらに望ましい

■息苦しいとき
 心臓や呼吸器の病気で息苦しいために横になることができないときは、上半身を高くすることが必要です。この体位は、心臓に戻ってくる血液量を減らし、肺のうっ血(余分な血液が貯留〈ちょりゅう〉し、肺循環がスムーズにいかないため息苦しくなる)を軽減するものです。息苦しいときは、寝ているよりも、むしろソファに座ったり、上半身を起こしたほうが楽になります。図のように、やわらかい枕を抱えるようにするとよいでしょう。


■からだの向きの変えかた
 からだを横向きにするのは、寝巻きの着せ替えや、からだをふくとき、シーツの交換、床ずれの予防などのときです。横を向かせるときは、介護する人が向かせたい方向にいるようにします。


□上半身の起こしかた
 介護者が、自分のからだの軸を療養者に近づけたほうが、余計な力を使わずに起こすことができます。

(執筆・監修:聖路加国際大学大学院看護学研究科 准教授〔在宅看護学〕 竹森 志穂)