食事の援助
食事は、病気回復のためにもっとも重要な意味をもっています。食事が進むにつれて全身状態がよくなってくることが、介護をするなかでしみじみと感じられるのではないでしょうか。
健康なときには、食事は楽しみの一つでもありますが、病人にとっては必ずしもそうとは限りません。食事にはさまざまな援助、工夫が必要になります。
理想的な食事の要件には、必要なエネルギー量をとること、バランスのとれた栄養素(糖質、たんぱく質、脂質、ミネラル〈無機質〉、ビタミン)をとること、消化・吸収のよい食品をとることがあげられます。
病気によっては、いろいろな食事制限が加わります。食欲は、精神的な要素(不安や心配などのストレス)や視覚、においなどの影響を受け、理想的な食事摂取ができないことが多いものです。
食欲のないときには、栄養のバランスよりも、食べたいもの、食べられそうなものをすすめたほうがよく、無理やりすすめると逆効果となることもあります。
しかし、1日の必要なエネルギー量と水分を最低限とらないと、低栄養・脱水の問題も起こります。特に高齢者と子どもは、体内に水分を蓄えておくことができないため、脱水になりやすいのが特徴です。
食べたくないと思って食べない状況が続くと、悪循環で、ますます食欲を失います。好きなもの、飲み込みやすいものをすこしでも口にして、食べられるきっかけをつくってみましょう。
水分は、1日どのくらい飲んだかの記録をつけておくと、脱水を予防できます。めやすは、最低でも1000~1500mLとします。ミネラル(無機質)やビタミンの含まれたスポーツドリンクをすすめるのもよいでしょう。
治りたいという希望を失っているときは、食事はなかなかすすまないものです。こころの面で励まし、支えることも食事への大切な援助です。
また、療養者の食事をつくるときに、特別な献立にすることは経済的にも時間的にも負担となるため、なかなか長続きしません。
長続きのコツは、できるだけ家族と同じ献立のなかで工夫をすることです。たとえば、家族の食事をこまかく刻んだり、煮込んだり、一部をとって薄味にする工夫です。市販の介護食やベビーフードも使いやすく、食べやすいものが多く出回っています。活用をおすすめします。
□食事援助の原則
・できるだけ上半身を起こして、食べやすい体位にします。
・食事の前は手をふき、口もうがいをするとさっぱりします。
・ベッドの場合は、サイドテーブルや折りたたみのちゃぶ台などに食膳を置き、できるだけ自分で食べるように援助します。食べものがこぼれても心配ないように、タオルやエプロンを当てておきます。
・自分で食べることができないときは、ゆっくりと1口ずつ、むせないように気をつけて食べさせます。
・食事のときは、楽しい雰囲気になるよう心掛けます。ただし、かんだり飲み込んだりする力が落ちている場合には、食べている途中で話しかけられるとむせてしまうことがあるので、注意しましょう。
・介護者は、義務的にならず、相手を思いやる余裕をもつようにします。
・むせやすい場合には、食事にとろみをつけたほうが、むせずに飲み込みやすくなります。介護用のとろみつけの粉末や片栗粉を使って、とろみをつけることができます。
(執筆・監修:東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 看護科学域 准教授 竹森 志穂)
健康なときには、食事は楽しみの一つでもありますが、病人にとっては必ずしもそうとは限りません。食事にはさまざまな援助、工夫が必要になります。
理想的な食事の要件には、必要なエネルギー量をとること、バランスのとれた栄養素(糖質、たんぱく質、脂質、ミネラル〈無機質〉、ビタミン)をとること、消化・吸収のよい食品をとることがあげられます。
病気によっては、いろいろな食事制限が加わります。食欲は、精神的な要素(不安や心配などのストレス)や視覚、においなどの影響を受け、理想的な食事摂取ができないことが多いものです。
食欲のないときには、栄養のバランスよりも、食べたいもの、食べられそうなものをすすめたほうがよく、無理やりすすめると逆効果となることもあります。
しかし、1日の必要なエネルギー量と水分を最低限とらないと、低栄養・脱水の問題も起こります。特に高齢者と子どもは、体内に水分を蓄えておくことができないため、脱水になりやすいのが特徴です。
食べたくないと思って食べない状況が続くと、悪循環で、ますます食欲を失います。好きなもの、飲み込みやすいものをすこしでも口にして、食べられるきっかけをつくってみましょう。
水分は、1日どのくらい飲んだかの記録をつけておくと、脱水を予防できます。めやすは、最低でも1000~1500mLとします。ミネラル(無機質)やビタミンの含まれたスポーツドリンクをすすめるのもよいでしょう。
治りたいという希望を失っているときは、食事はなかなかすすまないものです。こころの面で励まし、支えることも食事への大切な援助です。
また、療養者の食事をつくるときに、特別な献立にすることは経済的にも時間的にも負担となるため、なかなか長続きしません。
長続きのコツは、できるだけ家族と同じ献立のなかで工夫をすることです。たとえば、家族の食事をこまかく刻んだり、煮込んだり、一部をとって薄味にする工夫です。市販の介護食やベビーフードも使いやすく、食べやすいものが多く出回っています。活用をおすすめします。
□食事援助の原則
・できるだけ上半身を起こして、食べやすい体位にします。
・食事の前は手をふき、口もうがいをするとさっぱりします。
・ベッドの場合は、サイドテーブルや折りたたみのちゃぶ台などに食膳を置き、できるだけ自分で食べるように援助します。食べものがこぼれても心配ないように、タオルやエプロンを当てておきます。
・自分で食べることができないときは、ゆっくりと1口ずつ、むせないように気をつけて食べさせます。
・食事のときは、楽しい雰囲気になるよう心掛けます。ただし、かんだり飲み込んだりする力が落ちている場合には、食べている途中で話しかけられるとむせてしまうことがあるので、注意しましょう。
・介護者は、義務的にならず、相手を思いやる余裕をもつようにします。
・むせやすい場合には、食事にとろみをつけたほうが、むせずに飲み込みやすくなります。介護用のとろみつけの粉末や片栗粉を使って、とろみをつけることができます。
(執筆・監修:東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 看護科学域 准教授 竹森 志穂)