てんかん

 熱がなくて、けいれんや意識消失などの発作をくり返す病気をてんかんといいます。からだの一部のけいれんや感覚症状などを示す場合を部分発作といいます。意識が正常な単純部分発作、意識がはっきりしなくなる複雑部分発作に分けます。全身の発作症状を起こす場合を全般発作といい、部分発作から全般発作へひろがることもあります。
 発作のかたちとして、全身の筋肉がかたくなりその後ガタガタふるえる発作(全般強直間代発作)、意識消失して動きがとまる発作(欠神発作)、からだがピクッとする発作(ミオクロニー発作)、感覚発作、力が抜けて倒れる発作(脱力発作)など、いろいろな発作があります。多くは脳波検査で発作波が検出されます。新生児から学童まで、どの年齢でも起こりますが、てんかんの種類によっては子どもの時のみなど、特定の年齢にのみ起こります。2017年には、新しいてんかんの国際分類が提唱されました。

[原因]
 多くは原因がはっきりしません。頭部外傷、脳炎髄膜炎のあと、脳性まひに伴うものなどの脳の傷によるものもあります。遺伝子異常によるてんかんもあります。また、低カルシウムや低血糖などの代謝異常などの原因がないかの確認も必要です。

[種類]
 発作の症状、発症した年齢や脳波所見から分類します。大きく、脳全体に同時に発作が始まる全般てんかんと、脳の一部の発作症状から始まる焦点てんかんに分類します。
 全般てんかんでは、機能的なもので脳の器質的な病気がない小児欠神てんかん、若年欠神てんかん、若年性ミオクロニーてんかん、全般強直間代発作のみを示すてんかんは特発性全般てんかんとされています。また、焦点てんかんのなかには、小児期など特定の年齢で始まり、多くは特定の年齢で治癒していく自然終息性焦点てんかんがあります。以下に、代表的な疾患を記載します。

■全般てんかん
□ウエスト症候群
 生後4カ月から1歳ごろまでの乳児に起こります。一瞬、くびを前にカクンと下げ、同時に手足を前にピクンとする発作を、数秒間隔で何回かくり返します。おじぎをするような発作なので点頭てんかんと呼ばれています。結節性硬化症や生まれる前後の低酸素による脳障害などの病気に伴って起こすこともあります。注射による治療薬がありますが、治療が遅れると知的発達症(知的障害)を起こしてくるので、早期に発見し治療することが重要です。
□レノックス症候群
 全身を短時間強直する発作、ボーッと意識がはっきりしなくなり徐々にからだがくずれていく発作、からだがピクンとするミオクロニー発作やバタンと倒れる発作など、いろいろな発作を起こしてきます。ウエスト症候群が治らずに引き続くこともあります。治りにくく、知的発達症(知的障害)を伴うことも多くみられます。

■特発性全般てんかん
□小児欠神てんかん(純粋小発作)
 5歳から15歳ぐらいの子どもに起こります。突然意識がなくなり、動きがとまります。姿勢はそのままですが、目の焦点が合わないようになり、持っているものを落としたり、呼んでも反応がないことなどで気づかれます。数秒から数十秒で意識が戻ります。深呼吸をくり返すことで発作が引き起こされることもあります。多くは15歳までに治ります。
□若年性ミオクロニーてんかん
 10歳代くらいから発症します。朝に多い、手や肩がピクンと動くミオクロニー発作を起こします。全般強直間代発作、欠神発作などを合併することもあります。薬の効果はいいのですが、生涯薬をのむ必要があります。

■焦点てんかん
 手や足などからだの一部分がつっぱったりピクピクしたりする発作、からだの一部のくり返す自動的な動き、においや同じものが見えるなどの感覚発作など脳の一部分に限られた発作の症状を起こします。発作が始まる脳の場所により発作症状が違います。これらの発作のあとに全身のけいれんを起こしたり、焦点発作の症状がはっきりしないで、全身のけいれんで始まることもあります。意識があることが多いのですが、焦点発作を起こしていながら意識がはっきりしなくなる発作もあります。

■自然終息性焦点てんかん
□中心・側頭部に棘波を示す自然終息性てんかん
 4歳ごろから10歳ごろに起こり12歳ごろまでに自然に治ります。顔の片側が引きつる、よだれが出る、片方の手足がつっぱるなどの発作を起こし、時に全身のけいれんを起こします。眠っているときに発作を起こし、脳波でも睡眠時に発作波が多発します。脳波異常にくらべて発作は少なく発作を起こさない人もいるので、抗けいれん薬の服用治療は発作をくり返すときだけにします。

[治療]
 発作の症状、脳波検査、神経学的検査、血液検査の結果などから、原因疾患とてんかんの分類を診断して治療をおこないます。原因となる病気がある場合はその治療も行います。
 てんかんの治療においては、てんかんの種類により薬が違うので、適切な治療薬を選択して内服治療をおこないます。眠気、発疹や精神症状などいろいろな副作用にも注意します。近年、多くの抗てんかん薬が認可されて使用できるようになり、副作用が少ない薬も出てきており、発作が抑えられることも多くなってきています。
 毎日、継続的に内服し、血液中の薬の濃度をはかりながら有効な量を決めていき、発作が起こるのを防ぎます。1つの薬での治療を目指しますが、一部には治りづらく、数種類の薬をのむ必要がある子どもや発作抑制が困難な子どももいます。
 発作が抑えられても数年間は内服を続けることが必要で、根気よく薬をのむことが必要ですが、てんかんの多くは治癒し、薬を中止することが可能です。最近、薬では治りきらない患者に対して、脳の手術や迷走神経刺激療法もおこなわれています。
 けいれん発作時の対応は「熱性けいれん」を参照してください。

【参照】脳・脊髄・末梢神経・筋の病気:てんかん

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