逆流性食道炎〔ぎゃくりゅうせいしょくどうえん〕

 食道と胃の接合部付近には、胃の内容物が食道に逆流しないような逆流防止機構があります。食道裂孔ヘルニアなどのようにこの逆流防止機構がこわれたり、食物の種類によっては下部食道昇圧帯の内圧が下がることもあり、胃の内容物が食道に逆流して食道の粘膜を傷つけ、食道炎を起こします。
 欧米人に多くみられますが、食生活や生活様式の欧米化に伴い、最近では日本人もかかる人がふえてきました。

 肥満も逆流を起こす原因になります。じりじりした胸やけ、心窩(しんか)部痛、つかえ感がみられ、出血することもあります。食道炎の状態が長く続くと、食道の粘膜が胃と同じような円柱上皮で置き換わり、バレット上皮になることがあります。バレット上皮には潰瘍(かいよう)ができたり、がんが発生しやすいといわれています。
 脂肪食、チョコレート、アルコールをとると下部食道昇圧帯の内圧が下がり、逆流が起こりやすくなります。また、過食などで胃壁が伸展するとこれも逆流しやすくなります。このように、胃液が食道に逆流すると逆流性食道炎になりやすいといわれています。
 治療は体重を減らし、制酸薬を服用して食道粘膜への刺激を少なくします。症状が強く日常生活に影響がある場合は、手術的に逆流を防止する形成術をおこないます(ニッセンの噴門形成術など)。手術は通常、腹腔(ふくくう)鏡下におこないます。


【参照】胃と十二指腸の病気:逆流性食道炎

(執筆・監修:順天堂大学 名誉教授〔食道胃外科〕 鶴丸 昌彦)
医師を探す

関連トピックス