英・University College London HospitalsのMarie Scully氏らは、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)に対する遺伝子組み換えヒトADAMTS13製剤アパダムターゼ アルファ/シナキサダムターゼ アルファ(以下、rADAMTS13)の予防効果を検討する第Ⅲ相非盲検試験の中間解析結果をN Engl J Med(2024; 390: 1584-1596)に報告。「予防治療としてのrADAMTS13は、cTTP患者のADAMTS13活性を正常レベルにまで改善し、急性のTTPイベント発生例はなかった」と述べている(関連記事:「3年ぶり改訂のTTP診療ガイドのポイント」)。

ドナー血漿に依存した補充療法には限界

 cTTPは極めてまれな血栓性の微小血管症であり、血液中の止血因子であるvon Willebrand因子(VWF)の特異的切断酵素ADAMTS13の活性が著減することで発症する。cTTPは血小板数の減少を特徴とし、臨床所見として血小板減少症、溶血性貧血、腹痛、頭痛、神経学的症状が見られる。

 従来cTTPに対しては①新鮮凍結血漿、②有機溶媒/界面活性剤(SD)処理を施した血漿、③血漿由来の血液凝固第Ⅷ因子/VWF製剤―などの点滴によるADAMTS13補充が標準治療とされてきたが、これらの製剤はドナー血漿に依存し、ADAMTS13の補充量も限定的だ。血漿に対するアレルギー反応などもあり、治療はしばしば難渋し長時間を要する。

TTPイベントと徴候が著減

 Scully氏らは今回、cTTP患者(ADAMTS13活性が正常値の10%未満)48例(年齢中央値33歳、範囲3~68歳)を2群〔21例(年齢中央値42歳、範囲3~54歳)と27例(同27歳、5~68歳)〕に分け、最初の6カ月間(Period 1)は、21例にrADAMTS13(40IU/kg)、27例には先述の3つの標準治療のいずれかを実施。次の6カ月間(Period 2)は、治療をクロスオーバーし、最後の6カ月間(Period 3)は、全例にrADAMTS13を投与した。

 48例中32例が試験を完遂した。rADAMTS13による予防治療期の急性TTPイベント発生はなかったが、標準治療期には1例に急性TTPイベントが発生した(平均年間発生率0.05、95%CI 0.00~0.14)。

 TTPの徴候(TTP manifestation)として最も頻度が高かったのは血小板減少症で、年間発生率(最小二乗平均値)はrADAMTS13治療期の0.74(95%CI 0.37~1.50)に対し、標準治療期は1.73(同0.92~3.23)だった。

 有害事象はrADAMTS13治療期に71%(95%CI 56~84%)に、標準治療期には84%(同70~93%)に発生。このうち担当医が治療との関連ありと判定したのはそれぞれ9%(同3~21%)、48%(同33~63%)だった。

 有害事象のために治療の中断または中止に至った症例は、rADAMTS13治療期はなく、標準治療期は8例だった。

 rADAMTS13治療期に中和抗体の発生は見られなかった。ADAMTS13の最大活性は、標準治療後の19%に対し、rADAMTS13治療後は101%だった。

日本では今年製造販売が承認

 cTTPは希少疾患であることから自然歴に関するデータが少なく、対照試験のデータもないが、今回の結果を踏まえScully氏らは「cTTP患者に対するrADAMTS13による予防治療中、ADAMTS13活性はほぼ正常レベルに達した。有害事象は軽度~中程度で、TTPイベントや徴候の発生も少なった」と結論している。

 なお、同製剤は日本では今年(2024年)に12歳以上のcTTPを対象として承認されている(関連記事:「先天性TTPに治療薬登場、アジンマが承認」)。

木本 治