メラノーマは悪性度の高い皮膚がんであり、進行すると致死率が上昇する。日本人では足底に生じるタイプが最も多く、ほくろとの鑑別が重要とされている。東京慈恵会医科大学皮膚科学講座の脇裕磨氏らは、足白癬と足底に生じるメラノーマとの関連を検討。メラノーマ患者では足白癬、特に角質増殖型足白癬の有病率が有意に高く、両者は有意に関連することが明らかになったと、J Dermatol(2024年5月6日オンライン版)に報告した。(関連記事「日本人の6人に1人が水虫」)
メラノーマ群30例、非メラノーマ群84例で検討
これまで、足底のメラノーマ発症には物理的な刺激の関与が示唆されていた。しかし、物理的な刺激が生じやすい陸上競技選手にメラノーマが多いといった報告はない。
一方、Helicobacter pylori感染による慢性胃炎は胃がんリスクを高めることが知られている。また、糖尿病が白癬やがんの発症と関連することも報告されている。
そこで脇氏らは今回、日本人の診療記録を用いた後ろ向き研究を行い、足白癬と足底メラノーマ発症との関連を検討した。
対象は、足底メラノーマ患者30例(メラノーマ群)と足底メラノーマ以外の皮膚病変を有する患者84例(非メラノーマ群)。顕微鏡検査で白癬菌の有無を確認した。
オッズ比は足白癬で3.5、角質増殖型足白癬で11
検討の結果、メラノーマ群では60.0%が足白癬に、26.7%が糖尿病に罹患しており、13.3%は両方に罹患していた。非メラノーマ群の罹患率はそれぞれ29.8%、13.1%、6.0%だった。
単変量解析を行ったところ、メラノーマ群では足白癬リスクとの有意な関連が認められ〔オッズ比(OR)3.540、P=0.003〕、特に角質増殖型足白癬と強く関連していた(同11.083、P<0.001、いずれもPearsonのχ2検定)。
性、BMI、糖尿病および足白癬の既往を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析でも、足白癬と足底メラノーマの有意な関連は維持され(OR 4.285、P=0.002)、足白癬が足底メラノーマ発症に関与する重要な因子であることが示された。
以上から、脇氏らは「足底メラノーマ患者において足白癬、特に角質増殖型足白癬の有病率が有意に高く、足白癬が足底メラノーマの発症に関与している可能性が示された。足白癬を治療または予防することで、これまで困難とされてきた足底メラノーマの予防が期待できる」と結論。さらに「白癬と発がんの関連を分子レベルで解明したい」と展望している。
(比企野綾子)