韓国・Korea University College of MedicineのNam Hoon Kim氏らは、血糖管理が不良な未治療2型糖尿病患者に対し、メトホルミン+SGLT2阻害薬ダパグリフロジン+DPP-4阻害薬サキサグリプチンの3剤併用療法(triple combination therapy;TCT)で治療を開始することにより、HbA1cの正常化と有害事象の回避を両立できるかについて、メトホルミンの後にSU薬とDPP-4阻害薬を段階的に追加するstepwise add-on therapy(SAT)と比較する非盲検多施設ランダム化試験(RCT)TRIPLE-AXELを実施。「新規2型糖尿病患者に対するTCTは、高い忍容性と安全性を維持しつつ効果的にHbA1cを低下させた」とDiabetes Obes Metab(2024年6月10オンライン版)に報告した。

早期からの厳格な血糖管理の重要性

 UKPDSおよびその長期追跡で得られた知見から、2型糖尿病の合併症リスクを低下させるには早期からの厳格な血糖管理が重要であることが示唆されている。厳格な早期血糖管理の戦略としては、カロリー制限や強化インスリン療法、2種類以上の糖尿病治療薬の併用が複数の臨床試験で提案されており、早期からの強力な治療が通常の治療より優れていることが示唆されている。しかし、臨床試験の期間は概して短く、長期的な血糖管理や糖尿病合併症の予防効果に関するデータは乏しい。早期からの併用療法を考える場合、厳格な血糖管理に伴う副作用または有害事象への配慮はかかせない。

診断時のHbA1c 9.3%、FPG 197mg/dL

 TRIPLE-AXEL試験は2018年4月~22年8月に韓国の9施設で実施された。新規に2型糖尿病と診断された18~75歳の患者105例をTCT群(51例)またはSAT群(54例)にランダムに割り付けた。ベーラインの患者背景は、平均年齢が49.5歳、男性が71例(67.6%)、BMIが27.5、HbA1cは9.3%〔9.0%未満が39例(37.1%)、9.0~11.0%が66例(62.9%)〕、空腹時血糖値(FPG)平均値は197.6mg/dL。併存疾患は脂質異常症が50例(47.6%)で最も多く、高血圧が41例(39.0%)、冠動脈疾患が6例(5.7%)と続いた。

 TCT群ではXiguo(メトホルミン1,000mg とダパグリフロジン10mgの配合剤)+サキサグリプチン5mgを投与。SAT群ではベースラインのHbA1cが①8.0~9.0未満の場合はメトホルミン1,000mgから開始し、その後FPGやHbA1cの推移を見てグリメピリド、シタグリプチンを追加、②9.0%~11.0%の場合は、メトホルミン1,000mg+グリメピリド2mgから開始した。主要評価項目はHbA1c 6.5%未満の達成および低血糖/5%以上の体重増加/有害事象による治療中断回避の複合とした。

HbA1c改善効果は同等だが低血糖、体重増少ない

 104週時点におけるHbA1cのベースラインからの改善幅は、SAT群-2.75%(95%CI -3.06~-2.44%)、TCT群-2.56%(同-2.87~-2.24%)で、群間差は0.19%(95%CI -0.25~0.64%、P=0.39)、HbA1c 6.5%未満を達成した患者の割合はいずれも46.3%と差がなかった。一方、低血糖/5%以上の体重増/有害事象による治療中断がなかった患者の割合はSAT群の38.0%に対し、TCT群では83.3%だった(リスク差45.3%、95%CI 28~62.4%、P<0.001)。

 以上から主要評価項目の達成割合はSAT群の17.1%に対し、TCT群で39.0%と有意に高かった(リスク差22.0%、95%CI 3.1~40.8、P=0.027)。

 研究の意義についてKim氏らは「未治療の新規2型糖尿病に対し、メトホルミン+SGLT2阻害薬+DPP-4阻害薬という経口糖尿病治療薬3剤のTCTと従来のSATを比較し、長期的な有効性と安全性を検証したRCTはこれが初めてだ」と指摘。「HbA1c改善効果に両群で差はなかったが、TCTの忍容性は高く、有害事象はSATよりも少なかった」と述べ、「SATがtreat-to-target戦略とすれば、TCTは"shoot and forget" 戦略といえるだろう」と説明している。

木本 治