今年度(2024年度)診療報酬改定は全体で+0.88%(ベースアップ評価料の+0.61%を含む)と、前回改定(+0.43%)に続き厳しいものとなった。外科系学会社会保険委員会連合(外保連)は11月11日に東京都で記者懇談会を開き、外保連実務委員長でがん研有明病院(東京都)副院長の渡邊雅之氏が、今年度診療報酬改定の検証結果を報告。要望した項目の採択率は新設・改正とも前回を下回った。施行率が高まっているロボット支援下手術については要望の4割の採択率で、増点は1件も認められなかった。(関連記事「診療報酬、ロボット手術で前進も『厳しい改定』」)
人件費が診療報酬点数を超える手術は9割超
外保連は、加盟する114の外科系学会が調査・検証した手術・処置・生体検査・麻酔・内視鏡の全術式のコストおよび技術料データを作成。術式ごとに「技術難易度」「必要スタッフ数」「所要時間」を精査して「人件費」を算出し、さらに「使用材料・機器・室料等のコスト」を配賦し算出した総費用を診療報酬額としてまとめた『外保連試案』を作成している。2010~22年の診療報酬改定では、手術料改定の根拠として『外保連試案』が活用された経緯がある。
今年度診療報酬改定に向け、『外保連試案』に基づいて外保連が要望した新設の139項目のうち、採択されたのは38項目(27.3%)、改正は182項目中41項目(22.5%)と、採択率はいずれも前回を下回った。
また人件費が診療報酬点数を超える手術は、前回から0.6ポイント減少するもいまだ90.4%を占めていた。さらに償還不可材料費が診療報酬点数を超える手術は前回とほぼ同じ13%台と改善が得られず、50%以下に抑制できた手術は減っていた(68.0%→65.1%)。
入院時食事療養費が見直されるも食材費上昇に追い付かず
現在、施行件数が急速に増加しているロボット支援下手術について、外保連は新規医療技術評価要望として15件を提案したものの、採択されたのはわずか6件だった。直腸がんの手術分類の見直しを含む10件の改正要望のうち、採択されたのは半数。そのうち、胃がんに対するロボット支援下手術の施設基準(手術症例件数)については、Helicobacter Pylori除菌療法に伴う胃がん発症率の低下などを背景に緩和された。
一方で、増点は1件も認められなかった。
今年度病院経営定期調査の中間報告(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会合同)によると、昨年度の医業利益は74.7%が赤字と回答していたという(回答率:4,443病院中12.2%)。
渡邊氏は「問題なのは、医業利益が赤字にならざるをえない診療報酬体系である」と強く訴えた。また近年の消費者物価総合指数は2020年から9%上昇しており、「前回改定から今回改定の伸び率(1.3%)が物価上昇に追い付いておらず、病院経営の厳しい現実につながっている」と指摘した。
今回、入院時食事療養費が見直され1食につき30円引き上げられた。算定の根拠は2022年度における病院給食の委託単価などに基づくが、食材費だけで同年度から現在10ポイント以上も上昇しているため、同氏はこの引き上げでは不十分とした。
(編集部・田上玲子)