米・Baltimore Veterans Affairs Medical CenterのAlison D. Lydecker氏らは、クロルヘキシジン含浸清拭または石鹸/水による洗浄(清拭)の糖尿病足潰瘍予防効果を検討するランダム化比較試験(RCT)を実施。「クロルヘキシジン清拭による足合併症の新規発症リスクの有意な低下は見られなかったが、糖尿病足潰瘍予防に関する将来の試験のための重要な教訓が得られた」とJAMA Netw Open(2025; 8: e2460087)に報告した。
外観や香りを同じにした清拭を1年間施行
足潰瘍は糖尿病の合併症のうち最も恐れられているものの1つである。足潰瘍の20%には感染が見られ、下肢の切断につながる場合もある。Lydecker氏らは2019年1月~23年1月に、①糖尿病診断、②糖尿病足合併症のリスクが高い、③歩行可能である、④両足がある、⑤足感染症がない―に合致する退役軍人を、毎日クロルヘキシジン2%で清拭(クロルヘキシジン群)または、毎日石鹸/水で清拭(対照群)に1:1でランダムに割り付け、1年間施行後の足合併症(慢性足潰瘍、中等度/重度の足感染、足切断)発生率を評価した。両清拭(タオル)は、色、サイズ、形、厚さ、感触、香りを同じにし、清拭後に塗るローションやフットケアに関する教育も統一した。
副次評価項目として、試験終了の約4週間後に採取したスワブを使って、病原菌に対するクロルヘキシジンの細小阻止濃度(MIC)を求め、薬剤耐性の有無を評価した。
クロルヘキシジン耐性は認められなかった
対象は175例(平均年齢68±9歳、170例が男性)、このうち117例が黒人/アフリカ系米国人、53例が白人だった。
クロルヘキシジン群(88例)の12例(14%)、対照群(87例)の14例(16%)が1年以内に足合併症を発症した。ITT解析の結果、対照群と比較したクロルヘキシジン群の足合併症リスクの有意な低下は認められなかった〔ハザード比(HR)0.83、95%CI 0.39~1.80、P=0.64〕。
ランダム割付時の前潰瘍病変の有無で調整後(aHR 0.75、95%CI 0.35~1.64)、さらに重症の末梢動脈疾患(PAD)を有する参加者を除外しても(同0.86、0.37~2.00)、両群間に有意な差は認められなかった。
試験終了後に培養を行った141例のうち55例(39%)にESKAPEをはじめとする糖尿病足感染症の病原菌群の定着が確認されたが、クロルヘキシジンに対するMICを両群で比較したところ、有意な差は認められなかった。
また、参加者の77%が、清拭の施行率は80%以上と報告したことから、両群とも清拭のアドヒアランスは高かったと推測される。
知見の一般化は難しい
以上の結果についてLydecker氏らは「われわれの知る限り、退役軍人の糖尿病患者を対象として、クロルヘキシジン清拭と石鹸/水による清拭の有効性を検討した試験はこれまでなかった」と指摘。
「石鹸/水による清拭に比べ、クロルヘキシジン清拭による足合併症発生リスクの有意な低下は確認できなかったが、忍容性は高かった」と結論し、「参加者の大半が黒人/アフリカ系米国人男性であり知見の一般化がしにくいこと、試験登録の基準が広すぎたことは限界である」と付言している。
(医学ライター・木本 治)