治療・予防

糖尿病が認知症のリスクに
高齢者の血糖管理のポイント

 糖尿病と認知症の関係が注目されている。糖尿病のある人はそうでない人に比べて認知症になりやすく、認知症になると糖尿病を悪化させる原因になることも分かってきた。二つの疾患の関係や悪循環を防ぐポイントについて、国立国際医療研究センター(東京都新宿区)糖尿病研究センターの植木浩二郎センター長に聞いた。

糖尿病と認知症との関係

 ▽インスリンの働きがカギに

 認知症患者の約6割を占めるのが、アミロイドβというタンパク質が脳の神経細胞に沈着し、死滅させるアルツハイマー型認知症だ。国内外の大規模研究で、糖尿病のある人はない人に比べ、アルツハイマー型の発症リスクが約2倍であることが明らかになっているが、なぜ糖尿病の人は認知症になりやすいのか。

 糖尿病では、インスリン抵抗性というインスリンの効きが悪くなる状態が先行する例が多い。インスリンの作用が弱まって血糖が下がらないと、インスリンの分泌量が増え、高インスリン血症が生じる。分泌量を調節

一つにインスリン分解酵素があるが、実はこの酵素はたまったアミロイドβを分解し、取り除く働きもしているという。

 植木センター長は「高インスリン血症の人は血中のインスリン濃度が高いので、インスリン分解酵素が大量に消費されます。その結果、脳内のアミロイドβが除去されずに残り、蓄積が進んでしまうと考えられます」と言う。

 またインスリンには、脳の神経細胞を保護し、細胞のエネルギー源であるブドウ糖の取り込みを指示する働きもある。このためインスリンの作用が弱まると、神経細胞へのエネルギー供給が低下するという。「この二つの要因から、糖尿病で認知症のリスクが高まると考えられています」と植木センター長。

 ▽重症低血糖に注意

 糖尿病患者は、食事療法や運動療法、薬物療法などにより血糖コントロールを行う必要があるが、植木センター長は「認知症になると自己管理が難しくなって糖尿病が悪化し、悪循環に陥りやすくなります」と話す。

 薬物治療で用いられるインスリン注射やスルホニル尿素薬は、使用のタイミングを誤ると低血糖を起こしやすい。重症の低血糖になると、認知機能の低下につながるため注意が必要だ。植木センター長は「重要なのは、患者さんの認知・身体機能、合併症を踏まえた個別の血糖管理です。医師の指示通りに薬を飲むのが難しい人は、週1回の薬を用いる、介護者に服薬補助を依頼するなど、治療を続ける工夫が大切です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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