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深刻化する子どもの近視
スマホなどの長時間使用は避けて

 文部科学省の2017年度学校保健統計調査によると、裸眼視力が0.3未満の小学生の割合は8.7%で、1979年度時点と比べて約3倍に増えている。スマートフォンやタブレット端末などが普及し、目を酷使していることが一因との指摘もある。子どもの近視の増加の背景や原因、注意点などについて、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)眼科の東範行診療部長に聞いた。

裸眼視力0.3未満の子ども(小中高生)の割合

裸眼視力0.3未満の子ども(小中高生)の割合

 ▽視力矯正で進行抑制

 目に入ってくる光は、眼球の角膜と水晶体という二つのレンズを介して屈折(ピント調整)し、目の奥にある網膜で焦点を結ぶ。その情報が視神経を通り、脳に伝わることで、物体が認識される。近視は、「眼軸」といわれる眼球の奥行き(眼球の角膜から網膜までの長さ)が伸びてしまう状態であるため、網膜よりも手前で焦点を結んでしまい、像がぼやけて見えることになる。

 東診療部長は「赤ちゃんは眼軸が短く、遠視の状態で生まれてきます。成長とともに眼軸は伸び、小学校に入学する頃に遠視がなくなって正視(自然に網膜に焦点が結ぶ状態)になるのです。ところが、そのまま眼軸が伸び続けてしまうと正視から近視になります」と説明する。

 その原因は定かではないが、近視が途上国よりも先進国に多いことから、東診療部長は「特に、スマホなどの画面を長時間見続ける現代人の生活が大きく影響していると考えられます。これが子どもにも広まったことが大きな要因です」と危機感を募らせる。

 ▽仮性近視の可能性も

 近視は進行が緩やかな上、子どもは目の疲れを感じにくく、近視に気付きにくい。その点、小学校に入学する直前に行われる就学時健診は、視力異常の早期発見に重要な役割を果たしている。「ただし、子どもの場合、目の緊張により視力が下がったように見える『仮性近視(調節緊張)』の可能性があります。検査後すぐに眼鏡を作るのではなく、まずは眼科を受診して正確な診断を受けてください」と東診療部長は呼び掛ける。

 一度近視が進んでしまえば元に戻すことはできないため、眼鏡コンタクトレンズを適切に使用することが大切だ。東診療部長は「小学生以下のお子さんには管理のしやすさや安全面から眼鏡の使用を推奨しています。近視は大人になるまで進行しますので、年2~3回の定期検査は必須です。スマホなどの長時間の使用は控え、目に負担の少ない生活を心掛けてください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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