治療・予防

脳卒中・心筋梗塞リスク高める糖尿病
腎や網膜の障害、下肢の壊疽に加え

 糖尿病の9割以上を占める「2型糖尿病」=用語説明参照=の患者が急増し、大きな問題になっている。この病気自体が引き起こす高血糖は病状がある程度進行するまで、ほとんど自覚症状がない。しかし、高血糖状態が続けば血管に大きなダメージが生じ、さまざまな合併症を引き起こすことが患者の健康状態や生活に大きな影響を与えてしまう。

 日本糖尿病財団理事長で新百合ヶ丘総合病院(川崎市)糖尿病センター長の岩本安彦医師は「糖尿病は長い時間をかけて進行することが多い病気だ。『治療している目の前の人が5年後、10年後にどうなっているのか』という視点に立って一人一人の予後を考える。特に合併症の発症をどう防ぐかが重要な治療課題になる」と強調する。

糖尿病教室には患者や家族が多く集まる=新百合ヶ丘総合病院提供

 ◇3大合併症

 合併症の中で知られているのが、腎機能障害と目の網膜障害、神経障害という3大合併症だ。これらの障害は高血糖が続くことで体内の細い血管(細小血管)が劣化して血流が阻害され、臓器や神経組織の機能が失われることで起きる。

 これらの合併症は検尿や採血による腎機能検査や眼底検査などで発見や進行度の診断は比較的容易で、早期の治療が可能になっている。それでも、進行すれば腎機能障害は人工透析の導入が必要になり、網膜障害は失明を引き起こす恐れがある。

 3大合併症の残り一つの神経障害は、より注意が求められる。「神経障害で比較的早期から出てくる足のしびれなどを糖尿病の合併症と気づかない事例も少なくない。放置していると、同時に進行する免疫力の低下も加わって血流が滞りやすい足先では、わずかな傷や細菌感染から体組織が壊疽(えそ)を起こすこともある」と岩本医師は指摘する。しかも、この状態が続くと、膝や足の付け根から先の全体に広がって切断を余儀なくされることもあるので、影響は深刻だ。

岩本安彦・新百合ヶ丘総合病院糖尿病センター長

 ◇血管へのダメージ

 3大合併症ほど認知度は高くないが、高血糖により細い血管と同様に硬化(弾力性の低下)が進む冠動脈など太い血管(大血管)への影響も軽視できない。

 動脈硬化の進行は、発病すれば生命の危機にも至る脳卒中や心筋梗塞の発病リスクを患者でない人の3倍から4倍に高めてしまうからだ。さらに、動脈硬化は高血圧症も併発させてしまい、相乗効果で発病リスクを引き上げることになる。

 岩本医師は「肥満傾向のある人は要注意だ。糖尿病の病状が進行すると、脳卒中や心筋梗塞の発病リスクを高めるだけでなく、発病した場合は重症化しやすくなるし、治療も難しくなる」と警鐘を鳴らしている。

 対策としては、継続的な治療による血糖値のコントロールと、食事内容の改善や規則的な運動の習慣化などの生活習慣の見直しが基本になる。ただ、「早期に効果が見えてこないことも多いため、なかなか継続しない。自身がなぜこのような治療が必要か、十分に理解することが必要だ」と言う。

運動の前後で採血し血糖値の変化を調べる経験も=新百合ヶ丘総合病院提供

 ◇患者教育に注力

 同センターで力を入れているのが、患者教育だ。患者教育のプログラムには教育入院(通常7日間)だけでなく、市民公開講座という形での糖尿病教室を開催している。

 教室では医師や看護師、管理栄養士らが講師となり、病状に応じた治療についてだけでなく、日常生活での注意点や食生活を見直すポイントなどについて分かりやすく説明する。

 岩本医師は「糖尿病は血糖値の上昇自体よりも、長い間に引き起こされる合併症の予防が治療の大きな目的になる。一緒に暮らしている家族に対しても、血糖値の管理をなぜしているのか、十分に理解してもらうことが重要になる」と話す。

 【用語説明】2型糖尿病

 血液中のブドウ糖を制御するインスリンの分泌量の減少や効果の低減により、血糖値が上昇してしまう病気。生活習慣の変化や高齢化社会の到来で患者は急増している。40歳代から発病・患者が増加すると言われていたが、近年は若年者の発病も少なくない。長らく肥満が大きな誘因とされてきたが、太っていない患者も少なくないことか判明。病気の早期の発見と治療の重要性が増している。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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