治療・予防

風邪や疲れに似た症状―子どもの心不全 
早期の発見と治療がカギ

 乳幼児期から思春期の子どもの心不全は、症状が風邪や疲れと似ていて発見が難しい。大阪急性期・総合医療センター小児科・新生児科の小垣滋豊主任部長は「一見、風邪のような症状でも、いつもと違う、妙に長引くと感じたら、必ず小児科を繰り返し受診してください。心不全の可能性もあります」と呼び掛ける。 

初期症状は年齢によりまちまち。学童期は疲れを訴えがちに

初期症状は年齢によりまちまち。学童期は疲れを訴えがちに

 ▽年代で違う特徴

 心不全とは、心臓に異常があるためにポンプとしての働きが悪くなり、全身に必要な血液が送れなくなる状態を指す。息切れむくみが起こり、悪化すれば命を脅かすこともある。子どもの場合、原因として〔1〕先天性の心臓病〔2〕心筋症(心臓の筋肉自体の病気)や不整脈〔3〕乳幼児期にかかった川崎病の後遺症―などがある。

 心不全の初期症状は子どもの場合、年齢によっても特徴があるという。乳幼児期は、〔1〕ミルクを飲む量が減る〔2〕機嫌が悪くぐずりがちになる〔3〕元気がないことが続く―など。体重増加が標準より少ないことから気付くこともある。学童期は、すぐに「疲れた」と口にし、腹痛や吐き気など消化器系の症状を訴える。

 本格的に運動を始める思春期になると、体力の衰えを話題にするようになる。「子どもの訴えに耳を傾け、大したことはないと決め付けずに、その都度、小児科を受診することが心不全の発見につながります。心不全は初期であるほど、治療により進行を遅らせることができます」と小垣主任部長は強調する。

 ▽多面的に治療

 心不全の治療は、初期であれば薬物療法と生活管理が中心となる。利尿薬などで息切れむくみを抑え、ベータ遮断薬で低下した心臓の機能を保護する。不整脈や血栓症などの合併症や突然死の予防も図る。運動制限、塩分と水分の摂取量を抑える食事などの生活指導も重要だ。さらに学校生活では、体育の授業などは個々に応じて負担を軽減させる環境を整える。

 多面的な治療を行っても症状が改善されず、進行する場合には、外科的治療も考慮する。人工ペースメーカーや補助人工心臓の利用、外科的心臓手術を検討する。重症化する心不全に対しては、心臓移植が選択肢に入る。2010年の改正臓器移植法施行後、小児の心臓移植の可能性も拡大している。「日本小児循環器学会による小児重症心不全治療相談窓口があり、移植の体制も整いつつあります。心筋シートをはじめ、再生医療の研究も進んでいます。より良い治療を受けるためにも、早期の発見・治療がとても重要です」と小垣主任部長は話している。(メディカルトリビューン=時事)


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