顔や下肢に赤い腫れ―丹毒
完治するまで継続して治療を
高熱、悪寒(おかん)などの全身症状に伴って、顔や下肢に正常な皮膚と境目がはっきりした赤い腫れが現れ、急速に周囲に広がった場合、丹毒(たんどく)の可能性がある。皮膚の細菌感染症で、腫れた部位は熱っぽく、光沢があるのが特徴だ。中には再発を繰り返す人がいるため、しっかり薬で治療することが大切だという。
皮膚に境のはっきりした赤色の腫れが現れる
▽免疫力低下などがリスクに
東京慈恵会医科大学(東京都港区)皮膚科学講座の石地尚興教授によると、丹毒は主に、表皮の内側にある真皮(しんぴ)で起こる細菌感染症だ。原因菌は、A群溶血性レンサ球菌(A群溶連菌)であることが多い。A群溶連菌は咽頭炎、中耳炎、副鼻腔(びくう)炎などを引き起こすありふれた細菌だ。急速に赤く盛り上がって広がる腫れは、触れると強い痛みを伴い、圧迫すると痛みが増強する。
発症の詳しいメカニズムは分かっていないが、顔や下肢の傷、虫刺され痕などから菌が侵入して感染を起こす可能性が考えられている。比較的暖かい季節に発症することが多く、がんの治療で免疫力が低下した人や、がんの手術でリンパ節を切除した人、糖尿病患者などで起こりやすいという。
▽腎臓病や再発の恐れも
丹毒と症状の似た皮膚感染症に、蜂窩織炎(ほうかしきえん)がある。主に黄色ブドウ球菌という細菌が原因になる。真皮より深い皮下脂肪組織で炎症が起こるため、丹毒とは異なり、正常部位との境界がはっきりしない例が多いとされる。
「ただし、皮膚の症状だけで丹毒と蜂窩織炎を区別するのが難しい場合もあります」と石地教授。そこで丹毒かどうかは、血液検査を行って、A群溶連菌が産生する毒素に対する抗体(ASOやASK)が血液中で増加しているかどうかで判断する。
治療には、溶連菌感染症に有効なペニシリン系またはセフェム系抗生物質を内服する。発熱や痛みなどの全身症状が強い場合は、入院して抗生物質の点滴を行うこともある。
石地教授は「軽症であれば、通常1週間程度の内服治療で治癒します。ただし、溶連菌が腎臓に感染して腎機能を低下させるなど、重い合併症を引き起こしたり、同じ部位に繰り返し生じたりするケースがあります」と説明する。そのため、医師の指示通りに完治するまで服薬を続けることが大切だ。予防として「顔や足の傷はきちんと治療し、菌が入り込まないようにしましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/06/14 08:00)