Dr.純子のメディカルサロン

この季節、加熱しても死滅しない「ウエルシュ菌」の食中毒に注意 第50回

 蒸し暑い季節、カレーなどが食べたくなるものです。家庭で作り置きしたときのお鍋は、どうしていますか。

 テイクアウトや、ウーバーなどの宅配・出前も、このところ人気ですが、「加熱が済んでいるから」と、室温で放置していないでしょうか。もし、そうなら、食中毒のリスクを高めます。

料理は作った後も大事【時事通信社】

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 ◆空気のないところで増殖

 カレーやローストビーフ、シチューなど、肉を使った料理、あるいは野菜と肉の煮物などは、作るときに加熱していますから、安心しがちです。

 でも、「ウエルシュ菌」という菌は、熱に強く、加熱しても、芽胞というカプセルのような状態で、生き残ることがあります。

 このウエルシュ菌は、もともと人や動物の腸の中に生息する常在菌であり、空気のないところで増殖する「嫌気性菌」です。

 原則、常在性のウエルシュ菌の芽胞は、摂氏100度で10分程度の加熱をすると、死滅します。

 しかし、生き残る芽胞もあって、それが腸管毒(エンテロトキシン)を産生する病原菌のウエルシュ菌になり、食中毒を起こします。

 ◆6~18時間で症状

 ウエルシュ菌による食中毒は、潜伏期間が6時間から18時間です。症状の多くは下痢、腹痛・嘔吐(おうと)です。

 多くの場合、数日で改善しますが、まれに、急激に血圧低下やショックなどが起こる場合があるとされています。

 治療はたいてい対症療法で、脱水防止のための補液が主体です。

 ウエルシュ菌による食中毒は、予防が大事です。「加熱しているから」という心理的な安心感がリスクを高めます。

 以下はポイントです。

 ▽加熱後の室温放置は危険⇒特に鍋のまま室温で一晩置くのはダメ

 ▽テイクアウト後の数時間の室温放置は危険⇒買って来たらすぐ食べるか、冷蔵庫に収納

 ▽肉・魚・野菜の煮込み料理の場合
 ⇒これら生鮮類はウエルシュ菌汚染が多いので、調理前に水でよく洗う
 ⇒加熱調理したら、小分けにして、空気に触れるようにする
 ⇒調理後は2時間以内に小分けにし、冷蔵庫か冷凍庫に保存する
 ⇒食べる前に再び加熱する
 ⇒作り置きの室温放置はやめる

 カレー、シチュー、マーボー豆腐、ロールキャベツ、肉じゃが、鶏のトマトソース煮込み、カボチャ煮つけ、そぼろ料理などの家庭料理を作るときは、「煮込んだ後、小分けにして、空気に触れさせ、冷蔵する」ということが大事です。

 また、大勢のお弁当をテイクアウトしてきた場合、そのままオフィスのテーブルの上に長時間、放置してしまうこともあるようですが、これもリスクを高めます。購入後は、素早く食べるか、冷蔵庫へ入れるなど、予防していただきたいと思います。

(文 海原純子)



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