「低血糖」で死の恐怖
アルコール依存症
~入院治療の日々を報告~(上)
依存症という病気を知っていますか?正常な範囲を超えてあるものにのめり込む病気で、アルコール、薬物、ギャンブル、買い物など依存の対象はさまざまだ。アルコール度数9のストロング系といわれる缶チューハイを愛飲してきた記者の場合は「アルコール依存症」と診断され、「断酒」を目指し入院生活を送ることになった。そのてんまつを報告する。
アルコール依存で低血糖 放置されたら死の危険も
◇「ながらチューハイ」
6月22日未明の出来事だったと思う。例によって会社に泊まり、缶チューハイ(500ミリリットル)を飲みながら後輩記者の原稿を読んでいた。態度は悪い。普通は自分の原稿を書いたり、記事の編集作業が終えたら、そのままデスクに居座ったり。缶チューハイ片手に契約した映画やスポーツの配信サービスを見ることも多い。これも態度が悪いが。
◇救急車で搬送される
酒以外の飲み物を自販機で買おうと財布から取り出した100円玉と50円玉を床に落とした。拾おうとするが、なかなか手につかない。そのうちに気を失った。
どれくらい時間がたったのだろうか。早番の編集局デスクらが私が倒れているのを見つけ、救急車を呼んだようだ。「〇〇病院が受けてくれる」。救命救急隊員の声が聞こえ、担架に乗せられるのが分かる。「失禁もしているぞ」。だが、恥ずかしいと感じるゆとりもない。
◇唇、手の震え
会社から病院は近く、ほどなくして救命救急のベッドに移された。手指がブルブル震え、唇からはうまく言葉を発することができない。「これはまずい」と慌てた。両腕に点滴をして、ようやく落ち着いてきた。看護師の「きょうは何日ですか」という質問にも答えることができるようになった。
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◇「断酒」しかない
「肝臓と膵臓(すいぞう)がボロボロだ」。いつの間にか、血液検査も済んでいたらしく、担当の医師がこう言った。「酒量を減らす必要がありますかね」。私のとぼけた質問に医師は「『断酒』しかない。そうしないと、肝臓がんへ一直線だ。これから長い闘いになるよ」と、怒りを抑えながら答えてくれた。
意識を失った原因は「低血糖」だという。高血糖より危険で、「見つけてくれた人がいたからよかった。そうでなかったら、死んでいたかもしれない」と医師。あまり物を食べずにいた結果、低栄養状態になり、アルコールで体のエネルギーを補う。当然、肝臓には正常の人よりも負担がかかる。私の肝臓は弱っていた。
◇専門病院に入院
死にそうな思いをしたことと、家族の激しい怒り(当然だが)。さすがの私も酒を飲む気にはなれない。翌日から地元の総合病院に入院し、点滴治療を受けた。2週間余り。会社に行けると思っていたが、甘かった。妻は私の入院中にアルコール依存症の治療を専門に行う都内の病院への入院を予約していた。徹底的に治せ、というわけだ。(鈴木豊)
入院治療の日々を報告(下) やめたくてもやめられぬ アルコール依存症
(2020/08/06 23:30)