特集

やめたくてもやめられぬ
アルコール依存症
~入院治療の日々を報告~(下)

 アルコール依存症は、条件がそろえば誰でもなる可能性がある病気だという。やめたくてもやめられない状態に陥り、飲酒を繰り返すことで、より強い刺激を求めるようになる。アルコールでは酒量が、薬物では使用量が増えていく。

教育用DVDを見て、アルコール依存症患者の姿に共感

 ◇治療の第一歩

 「低血糖」が原因で意識を失って救急搬送、「アルコール依存症」と診断された。そのまま「断酒」を目指し入院生活を送ることになったが、治療は依存症に関してきちんと理解するのが第一歩となる。

 依存症は「脳の問題であり、脳の病気だ。意思の問題ではない」。こう説明する専門家もいる。アルコールや薬物により、脳内に快楽物質ができて興奮する回路ができ上る。物足りなさが募り、「ほどほど」でやめることができない。アルコールに対する「耐性」ができてしまうからだ。

 私の場合は夜、会社で、缶チューハイ500ミリリットルを飲みながら新聞や小説を読んだり、テレビの番組を見たりした。500ミリリットルなら1本で十分という指摘もあるが、やはり1本では物足りない。

 入院中に見た教育のためのDVDで依存症の男性が深夜、酒がなくなりコンビニへ買いに行く場面があった。「その気持ち分かるなあ」。依存者にとってはアルコールが中心で、飲むこと以外に考えられなくなる、と専門家は言う。

文部科学省が作成した依存症の指導参考資料

 ◇肝硬変は「終着駅」

 アルコール依存症という病気は、酒を飲む「量」や「時間」、飲む「状況」など飲み方をコントロールできない。酒を飲み過ぎる生活が長いと、脳出血など脳血管障害、肝臓や膵臓(すいぞう)などの臓器の機能障害を招く恐れがあり、糖尿病や高血圧症などを合併しやすくなる。

 肝臓の障害の場合、脂肪肝やアルコール肝炎、肝硬変などがある。肝硬変は「肝障害の終着駅」ともいわれ、広い範囲にわたって肝細胞が壊死(えし)し、肝臓としての働きがない結合組織が増える。

 「肝硬変までいったら、終わりだった。あなたの場合はそうなる前に治療に入ることができた。良いきっかけになったと思わないとね」。私が倒れた翌日に入院した総合病院の医師の言葉に私は深くうなずいた。

 ◇ベッドの拘束具

 酒が切れると「離脱症状」に襲われることもある。アルコール依存症の特徴の一つだ。早い段階では手や体の震えや発汗、次の段階では幻覚や激しい興奮などが依存者を苦しめる。

 「医療者らに対する暴力的な言動もないし、離脱症状もない。これまでのところ、きれいな形で酒と別れています」。総合病院の医師はこう言った。

 私は当初、看護師が詰めている「スタッフ・ステーション」の真ん前の個室に入れられた。ベッドに横になろうとすると、背中に当たる部分に白い帯のようなものが置いてある。痛いので取り除こうとすると、看護師から「そのままにしておいてください」と言われた。

 「もう必要ないでしょう」。3日ほどして看護師が外そうとするので「もしかすると、患者が暴れたときの拘束具だったのですか」と尋ねると、「ええ」。時々使用することがあるという話を聞き、私の時に使わせなくてよかった、と心から思った。

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