特集

小児の炎症性腸疾患 
不足する診療施設 国立成育医療研究センター小児炎症性腸疾患センター長 新井勝大医師

カプセル内視鏡で発見した、小児の小腸にできた潰瘍

カプセル内視鏡で発見した、小児の小腸にできた潰瘍

 ◇治療薬に制約

 ただ、IBDの小児患者治療に使う薬については、まだまだ制約が残る。炎症が激しい場合に使われるステロイド剤は、小児や成長期の患者には、感染症に加え低身長や骨粗しょう症などの長期的な副作用も誘発する危険性があるため、投与の量や期間を最小限にする必要がある。また、より効果が期待できる免疫調節薬や生物学的製剤だが、小児への適用が認められているものは少ない。

 これらの薬は小児への投与が禁じられる『禁忌』ではないが、積極的に投与が勧められる『推奨』でもない。新井医師は「主治医が病状などを注意深く観察しながら、使用にあたっては同意書を患者や保護者から得るなどして使用している。IBDを患っている子どもたちに、必要な薬を届けるための治験の推進や身体の小さな子どもに適した内視鏡の普及などが望まれている」と強調する。(喜多壮太郎)

新井勝大医師

新井勝大医師

【用語説明】
クローン病
腸管粘膜に慢性の炎症が生じるIBDのうち、大腸を含む消化管のあらゆる部位にも炎症が生じる可能性がある疾患。血便、腹痛などの消化器症状だけでなく、難治性の肛門周囲膿瘍(のうよう)や痔瘻(じろう)、発熱や関節痛、貧血体重減少、成長障害など消化管以外の症状も多い。
②カプセル内視鏡
大きめのカプセルに超小型カメラとライトを内蔵し、患者に飲み込んでもらって腸内の画像を撮影、体外に伝送する使い捨て式の内視鏡。現在は主に小腸などの診療に使われている。

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