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コロナ禍で増える「愚痴口害」 第59回

  新型コロナ感染拡大の影響で外出自粛が続いたり、仕事が思うようにいかずイライラがたまったりしている人が増えています。そうした不満を自分なりに解決する手段があればいいのですが、やり場のない不満や怒りをつい周囲の人にぶつけてしまう人もいます。こうしたうっぷん晴らしの被害を受けている人たちの悩みを聞くことが最近多くなり、気になっています。

緊急事態宣言発令から一夜明け職場に向かう人たち=2021年1月8日午前、東京JR品川駅【時事通信社】(本文とは直接関係ありません)

 (ケース1) ベンチャー企業に勤務する30代女性のAさん。リモートワークが増えたものの、どうしても出社してやらなければならない業務があり、週2日は出社します。

 出社の日は上司の40代女性Bさんと一緒ですが、これがAさんには大きなストレス要因。Bさんはベテランで仕事はできるのですが、とにかく愚痴が多いのです。

 よその会社の社員の仕事ぶりや、部下の悪口などぶつぶつ言いながら仕事をするそうです。しかも、声が大きいのでAさんは気になって仕方ありません。時々同意を求めてくるので、それに付き合うので疲れます。

 上司の部長に相談するのですが、部長にはそうした態度を見せないので、Aさんの深刻な気持ちは理解してもらえないそうです。この数カ月はリモート率がさらに高くなり、出社人数が少なくAさんはBさんと2人ということもあり、愚痴被害が深刻になっています。このままでは会社を辞めたい、と思うまで追い込まれてしまっています。

 まさに「愚痴口害」。Aさんはこう感じています。

 (ケース2) こうした愚痴に悩まされているのは、職場で働く人だけではありません。30代主婦のCさんは、夫がリモートワーク週4日になり、愚痴の被害で悩んでいます。夫が1日だけ出社する日はとてもすがすがしい気分になるのだといいます。

 夫はパソコンに向かいながらぶつぶつ愚痴をこぼしたり、食事中もテレビのニュースやワイドショーを見ながらそれに文句を付けたりしているのだそうです。「これを聞いているだけで気がめいる。よくまあ、こんなに文句ばかり言えると思ってしまう」とうんざりしているそうです。

 少し黙っていてほしいのですが、「それを言ったら愚痴の矛先がこちらに向かいそうで怖い」とCさんは黙ったまま。ストレスがたまるばかりです。

 ◆愚痴こぼす人・聞く人ー役割固定化が問題

 愚痴の被害は職場や家庭で多発しています。愚痴をこぼすのは必ずしも悪いことではなく、お互いに愚痴を言い合い、共感できる内容なら問題がないのですが、愚痴が一方的で、愚痴をこぼす人と愚痴を聞く人の役割が固定している場合は、愚痴を聞く人のストレスになることを忘れてはならないでしょう。

 愚痴をこぼしている人はそれですっきりするでしょうが、聞いている人はたまらない、いつも聞いてばかりでうんざりしてしまいます。

 こうした役割の固定化は職場や家庭で人間関係の上下で決まることが多いのです。役職の上の人が愚痴をこぼし、部下がいつも聞くパターンや、家庭内で夫が妻に、親が子に、愚痴を言うパターンが多いのです。

 つまり、反論しない、反論できない立場の相手で、かつ、必ず同意してくれるであろう相手に愚痴を言うことが問題なのです。

 接客業の仕事に携わる人とお客との関係も同様です。特に長い時間接する場合、お客の愚痴の聞き役で疲れるという声も聞きます。

 ◆愚痴依存に注意

 反論せずに愚痴を聞いてくれる人がいると、愚痴をこぼすことに依存的になり愚痴をこぼし続けてしまう人になることがあります。Bさんの場合も常にAさんが黙っておとなしく聞いてくれるため、自分のうっぷんを解消している可能性があります。では、どうすればいいのでしょうか。

 愚痴を聞く羽目になっている人は、その愚痴を相手の独り言だと思うことが大切です。独り言だからいちいち同意したりするのはやめていい、のです。愚痴をこぼしている人はぶつぶつ言っていることで、うっぷんを晴らしています。真剣に同意しなくて大丈夫、うるさい雑音か工事の音くらいに捉えていて問題がありません。愚痴依存にならないようにするためにも、軽く受け流す態度が有効です。

 ただし、Aさんのようにその愚痴で体調が悪くなるような場合や、Cさんのように苦痛を感じて気持ちが追い込まれている場合は、愚痴をやめてもらう必要があります。Aさんのような場合は再度、上司の部課長などに相談し、それでも効果がないなら、産業医や会社の相談窓口を介して被害について理解と改善を求める必要があります。Aさんの場合は、2回産業医に相談し、産業医から上司に実情を連絡してもらい改善するようにしました。

 家庭内で夫の愚痴にうんざりしている場合は、夫の仕事が少なくゆとりがありそうな週末などを選んで自分の気持ちを伝えることが必要でしょう。

 一方、自分が立場が上だと思う人は、愚痴をこぼすとき気を付ける必要があります。愚痴を聞かされる人は気分がいいものではありません。お互いに同じ思いを持ち、共感しあえる愚痴でないと相手のストレスになることを自覚することが必要です。

(文 海原純子)
                                               
















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