治療・予防

外用薬の選択肢拡大―アトピー性皮膚炎
症状に応じて使い分け(慶応大学病院皮膚科 種瀬啓士専任講師)

 かゆみを伴う皮膚炎が、よくなったり悪くなったりを長期間繰り返すアトピー性皮膚炎。炎症を抑えるためにステロイド外用薬が使われるが、皮膚萎縮などの副作用を心配する声もある。2020年6月に新しいタイプの外用薬(JAK阻害薬)が登場し、新たな治療の選択肢として期待されている。慶応大学病院(東京都新宿区)皮膚科の種瀬啓士専任講師に話を聞いた。

 ▽従来薬の副作用に不安の声

 アトピー性皮膚炎の治療の基本はステロイド外用薬で、20種類以上ある。薬効の強さによって5段階に分類され、形状も軟こう、クリーム、ローションなど種類が豊富で、炎症の程度や部位、使用感などに応じて使い分けられている。

 ただし、長期間塗り続けると皮膚が萎縮する、赤みを帯びるといった副作用が表れることがある。医師の指導の下で使えば、そのリスクを最小限に抑えられるが、不安を感じる患者は少なくない。

 ステロイドを含まない免疫抑制薬のタクロリムス軟こうは、主に塗り始めに表れる一過性の刺激感が治療を継続する上で課題となっている。

 ▽感染症に注意

 新たに登場したのはJAK阻害薬のデルゴシチニブ軟こうで、成人が対象(20年11月時点)。従来の外用薬とは全く異なる作用の仕方で炎症やかゆみを起こす情報伝達をブロックして、抗炎症効果などを発揮する。

 デルゴシチニブ軟こうは、ステロイド外用薬で問題となる皮膚萎縮などの副作用がないとされる。炎症を抑える効果は、弱めのステロイド外用薬に相当するという。タクロリムス軟こうと比較した臨床試験では、刺激感は少なく、有効性は同程度であった。

 これらの知見から、種瀬専任講師は「それぞれの薬剤の特徴を踏まえて使い分けるのがよい」と説明する。例えば、「ステロイド外用薬の副作用が表れやすい顔には新薬を用いる。また、体の皮膚炎はステロイド外用薬で改善したら、再発を抑える目的で新薬に切り替える」といった使い方だ。

 デルゴシチニブ軟こうの注意すべき副作用として皮膚の感染症がある。中でも、小さな水膨れが顔全体や上半身に広がる「カポジ水痘様発疹」が臨床試験で1.9%報告されている。

 種瀬専任講師は「顔にアトピー性皮膚炎が表れていて、ステロイド外用薬でコントロールできず困っている場合は、デルゴシチニブ軟こうの使用について担当の医師に相談するのがよいでしょう」と話している。
(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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