治療・予防

子宮体がんの自覚症状
~別の部位との混同にも注意(慶応大学病院婦人科 青木大輔教授)~

 子宮がんは、入り口付近に発生する子宮頸(けい)がんと、奥の袋状の部分に発生する子宮体がんに分別される。慶応大学病院(東京都新宿区)婦人科の青木大輔教授は「二つを混同する人が多いのですが、全く別物です。子宮体がんは市町村や人間ドックの検診対象ではないので、自覚症状を見逃さないことが大切です」と話す。

子宮体がんの自覚症状で最も多い不正出血

子宮体がんの自覚症状で最も多い不正出血

 ▽不正出血に注意

 子宮体がんの患者は1万7千人を超え(2018年)、増加傾向にある。閉経後の50~60代で発症が多い。青木教授は「最も多い自覚症状は不正出血です。下腹部痛や腰痛が表れることもあります」と説明する。

 エストロゲンという女性ホルモンの影響が大きく、無排卵や遅発閉経、極度の肥満、多嚢胞(のうほう)性卵巣症候群などで子宮内膜が長期間エストロゲンにさらされると発生しやすくなる。

 問題は、毎年のがん検診で安心している人が多い点だ。「自治体や人間ドックで行われるのは子宮頸がん検診です。子宮体がんは対象外なので、早期発見・治療が重要です」

 ▽治療は手術が中心

 検査では、細い棒状の器具で子宮内膜をこすって細胞を取り、顕微鏡で調べる子宮内膜細胞診が一般的だ。超音波検査で子宮内膜の厚さを測定し、診断材料にすることもある。疑わしい場合は組織を採取する子宮内膜組織診も行う。

 青木教授は「多少の出血や痛みを伴いますが、組織診の方が、がんの有無、組織型や悪性度などが確実に診断できます」と説明する。さらに、磁気共鳴画像装置(MRI)検査やコンピューター断層撮影(CT)検査で進行度も診る。

 治療の中心は手術だ。子宮だけでなく卵巣や卵管も同時に摘出する。同病院では、体への負担が少ない内視鏡手術やロボット支援手術も積極的に行う。早期発見で出産希望の若年患者の場合、薬物療法を行い、出産後に子宮を摘出するケースもある。

 近年は、免疫機能の働きを活性化させてがん細胞を攻撃する免疫チェックポイント阻害薬が開発され、進行例や再発例への応用も研究されている。

 青木教授は「閉経後の不正出血は何らかの異常を示すサインです。出血量に関係なく、必ず専門医を受診してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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