治療・予防

排尿障害、認知症も疑うべき
~加齢のせいにせず早期受診を(東邦大学医療センター佐倉病院脳神経内科 榊原隆次教授)~

 頻尿や尿失禁などの排尿障害と、歩行障害―。高齢者に多いこれらの症状は、認知症と関係している場合がある。東邦大学医療センター佐倉病院(千葉県佐倉市)脳神経内科の榊原隆次教授は「薬で治療可能な症状も少なくありません。年のせいだと思わずに、認知症なども疑ってみることが大切です」と話す。

認知症に伴う代表的な排尿障害

認知症に伴う代表的な排尿障害

 認知症タイプで症状異なる

 認知症に伴う排尿障害は、就寝後に2回以上トイレに行く夜間頻尿、突然表れる尿意切迫感、トイレに間に合わない切迫性尿失禁が代表的。歩行障害も重なっている場合が少なくない。

 榊原教授によると、認知症のタイプにより、目立つ症状は異なる。「アルツハイマー型認知症では認知症の症状が強く、排尿障害や歩行障害は目立ちません。反対に、脳血管性認知症は排尿障害と歩行障害が強く出ます。レビー小体型認知症は、認知症、排尿障害、歩行障害のいずれも目立ちます」。

 認知症が脳血管性の場合は、排尿機能に関わる神経がある、脳の前頭葉で血流が低下。レビー小体型は排尿や尿をためる機能を担う脳の基底核と呼ばれる部分に異常が生じるため、排尿障害が起きやすいという。

 ▽発病の前触れか

 排尿障害の診断には、ぼうこう機能を調べるウロダイナミクス検査や、超音波を使った残尿測定検査などを行う。また、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症や糖尿病、男性の場合は前立腺肥大症など、排尿障害の原因となる他の疾患がないかも調べる。

 治療では、β(ベータ)3刺激薬でぼうこうの筋肉への不要な刺激を減らし、尿意切迫感や頻尿などの症状の改善を目指す。「従来の抗コリン薬と違い、認知機能の低下に影響する心配がないので、現在は広く使用されています」と榊原教授。

 認知症が進行すると、排尿障害がなくても、認知機能や運動機能の著しい低下から尿失禁が起こるようになる。「患者さんの排尿ペースに合わせた周囲の声掛けや、超音波による残尿測定器の使用、おむつやパッドをうまく利用するなどで、QOL(生活の質)を高めるとよいでしょう」

 榊原教授は「高齢者にありがちな頻尿や歩行障害は、脳の病気の前触れとも言われます。病気として捉えることで、治療や予防がある程度可能です。健康寿命を延ばすためにも、早期受診してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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