治療・予防

心身を癒やす「デジタル森林浴」
~コロナ禍で注目(森林研究・整備機構 高山範理さん)~

 コロナ禍で移動の機会が減る中、室内でも自然と触れ合う場を得られる「デジタル森林浴」が注目されている。その効果を検討した森林研究・整備機構森林総合研究所(茨城県つくば市)森林管理研究領域チーム長の高山範理さんに話を聞いた。

「デジタル森林浴」

「デジタル森林浴」

 ▽実際の森林と同じ効果

 「デジタル森林浴」は、大型マルチスクリーンによる映像や立体的な音響システム、自然のアロマを用い、室内に森のような空間を再現する。

 このシステムを開発したフォレストデジタル(北海道浦幌町)と森林研究・整備機構森林総合研究所は2021年2月、男女25人を対象に検証を行った。参加者には、森林内の映像、葉擦れの音や鳥のさえずり、エゾマツの精油の香りなどを用いた「デジタル森林浴」を20分間体験してもらった。

 その結果、体験中に心拍数が低下する一方、副交感神経の活動は上昇し、生理的にリラックスすることが分かった。心理的な評価についても「気分の緊張、不安」「抑うつ、落ち込み」「怒り、敵意」「疲労」「混乱」といった数値が体験後に低くなり、ストレスや疲労感が軽減された。

 さらに、心理面の測定結果と実際の森林で測定されたデータを比べると、各項目とも実際の森林浴に近い水準にあることが実証された。

 ▽もっと森林に関心を

 「日本の森林面積は国土面積の約67%。森林率は世界で3番目に高いのですが、関心はあまり高くないようです。『デジタル森林浴』を体験することで、都市に住む人が自然環境に興味を持てるような環境を醸成できればと思います」と高山さん。

 常設スペースは、北海道浦幌町や羽田空港、東京・大手町などにあり、定期的にイベントも開催。将来的には病院や高齢者医療施設などへの導入も目指している。

 「現在、1000以上の音や香りの素材、100種類の映像があります。今後はリアルタイムでの映像配信も考えています。四季の移り変わりや地域の生活に思いをはせるなど、都市と地方をつなぐツールになればと思います」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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