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コロナストレスを解消したい
~心の扉を開いて~ 医学博士 福田千晶

 新型コロナウイルス感染拡大による恐怖や生活上の制限を抱えながら暮らす日々は、すでに1年を超えています。そのため、ほとんどの人にストレスがたまっていると言われています。 

長引く自粛生活で人々のストレスがたまっている=4月25日、大阪市北区の地下街

 ◇ストレスのパターンもいろいろ

 昨年の春は「コロナに感染したらどうしよう」「無症状のうちに感染していて、他の人にうつしてしまったらどうしよう」という不安がストレスになっていました。人間ドックの受診者にも「感染が怖くて、夜もよく眠れない」という人が何人もいました。

 現在も続いているマスク生活は、特に暑い日は不快で、精神的にも圧迫感があり、これもストレスの大きな原因となります。さらに、昨年はマスクが入手できず「あと5枚で無くなる」という不安もありました。トイレットペーパーが品薄になり、開店前に並んでも買えなかったり、遠方に買いに行ったりと、焦り、不安、怒り、いろいろなことがありました。

 一口にコロナ関連のストレスと言っても、幾つかのパターンがあります。

・感染の恐怖や不安そのものがストレス
・感染したら中傷や差別を受けそうな不安
・自粛生活で自由が制限されて、普段のストレス発散の方法が奪われた
・慣れないリモートワーク
・家族のリモートワークで家事負担や生活制限の増加
・いつまで続くか先が見えない不安
・収入減少や解雇など経済的な問題
・友人や親類に会えない孤独感
・ナーバスになり将来のことすべてが心配
など、いろいろなのです。

 ストレスがあると、不調の表れ方も、さまざまです。イライラしたり、緊張したり、常に不安で自信がなくなったり、すぐに悲しくなったりしがちです。反対に、妙にテンションが上がってしまう人もいます。他人との会話で衝突したり、いつもよりキツい言い方をして人間関係に支障を来したり、暴言を吐いてしまったり。落ちついてから考えてみると後悔するような言動にもつながりかねません。

 しかし、ストレスによって心や気分より、まず体に変化が表れる人も意外に多いのです。例えば、睡眠の異常、胃の痛み、食欲の低下や過剰な食欲、下痢や便秘、頭痛、血圧が上がるといったことです。また、最近では腰痛もストレスが原因で起こることがあると言われています。「なんだか体調が悪い」という不調もストレスによって起こります。

 ◇心の負担を減らす工夫

 思い当たる人は、ストレスを少しでも減らすようにできることから試みましょう。心の負担を減らすためには、コロナ関連の報道などを見過ぎないことも大切です。コロナ禍による不幸を連想させる解雇、ローン破綻、コロナ離婚なども、自分自身が直面していないなら関心を持ち過ぎない方がよいのです。

 孤独や不安がある人は、友人や離れて暮らす家族と電話やリモートで話をしましょう。声を聴くことで、気持ちが通じ安心できることもあります。

 運動不足のモヤモヤ感を自覚しているなら、晴れた日にウオーキングをするなど、太陽の光を感じながら身体を動かしてみましょう。大きく深呼吸して、屋外のフレッシュな空気をいっぱいに吸い込んでください。室内では、ストレッチなどで体を伸ばしながら、心もほぐすことを日課にしたいものです。

 絵を描く、刺しゅうをする、凝った料理を作る、本棚やクローゼットの整理など、一時的に集中できること、終わったら満足感を得られてスッキリすることにチャレンジするのもお勧めです。自分が「快適、気持ちいい」と思えること、コロナ禍にあっても、できることを見つけておけるといいですね。

 私は大学時代まで競泳に打ち込み、ジュニア時代には全国大会で優勝したこともあります。本当の「日本一」になったわけではないし、オリンピックに出場できたのでもないけれど、水泳を通じて学んだことは人生の大きな宝です。

自然を眺めて心の扉を開ける(写真は米国・グランドキャニオン)

 ◇競泳のコーチから学んだこと

 ある夏の大会の前日、現地のプールでの練習中、あるコーチに「みんな、一度練習をやめなさい。そして、空を見てごらん。好きな雲を探してごらん」と言われました。ほんの10秒間、空を見上げ、そして、すぐに練習が再開しました。

 翌日の試合では、私も良い記録が出て優勝したので、コーチに「昨日の『空を見る』というのは何の練習だったのですか?」と質問しました。すると「あの時は、君たち選手は良い泳ぎができず、イライラして心の扉を閉じていた。そういう時は、自然を眺めて心の扉を開けるのが一番良い方法なのさ。心の扉が開けば、泳ぎのアドバイスも活きた指導になって良い泳ぎにつながる。選手同士の励ましもパワーになるし、試合当日の客席からの声援や拍手も心に届く。それが大きなエネルギーとなって、良い記録や勝利の源になる」と、種明かしをしてくださいました。

 さらに「人は自然の姿を眺めると、不思議と素直になって心の扉をスーッと開けることができる。プールにいたから『空を見てごらん』と言ったけど、山や海の景色でもいいし、美しい新緑や花を眺めてもいいんだ」と教えてくださいました。

 ストレスに押しつぶされそうな時は、きっと心の扉を閉めているのでしょう。そんな時は、まず自然を眺めて心の扉を開けることをお勧めします。心の扉が開くと、そこに誰かが良い情報を持ってきてくれるかもしれません。ふと見たテレビ番組やネットニュースから役立つ情報を得ることもあるでしょう。そして、仕事や経済的な問題なら、相談すべき窓口や人が分かると解決に向けた方向性も見えてきます。

 開いた心の扉からは、知人や友人の激励や笑顔になれる話が届くこともあります。そんなことがきっかけで、一歩前進することができるかもしれません。ストレスを感じたら小さいうちに、何かを試したり、実行したりすることで心を癒やし、体も元気を取り戻したいものです。でも、長引く不調や解消できないコロナストレスは、心療内科か精神科に相談することも、早めに復活して元気になるために大切な方法です。(了)

福田千晶氏


 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶應義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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