治療・予防

リハビリ、手術などで治療
~声が出にくい声帯まひ(日本大学医学部付属板橋病院 中村一博診療准教授)~

 喉仏の位置にある声帯が動かなくなると、声を出しづらくなる。声帯まひと呼ばれる病気だ。日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)耳鼻咽喉・頭頸(とうけい)部外科の中村一博診療准教授は、専門の医療機関を受診して治療を受けることを勧めている。

声帯の機能

声帯の機能

 ◇がん、大動脈瘤などで

 声帯は左右一対あり、呼吸のために開いているが、声を出すときは閉じてぶつかり合うように振動する。しかし、声帯を開いたり閉じたりする反回神経などが障害を受けると、声帯の片方または両方が動かない声帯まひになる。

 症状は声が出にくい、続けて出ない、枯れる、息が切れやすい、呼吸が苦しい、むせるといったもので、日常生活に支障を来す。左側の声帯が動かないケースが半数以上を占める。

 声帯まひを引き起こす原因は、甲状腺・肺・食道・乳がんなどのがんが最も多い。がんの増殖で反回神経が圧迫されたり、がんの手術で傷ついたりしてまひに至る。このほか反回神経に近い胸部の大動脈瘤(りゅう)やウイルス感染によるもの、原因不明の場合もある。

 ◇リハビリと手術

 治療法としては、まず「音声リハビリテーション」を始め、吐く息を多くして左右の声帯がぶつかりやすくすることを目指す。6カ月ほどたっても回復しなければ、手術を検討する。ただし、がんが原因ならその治療を優先する。

 手術は、まひした声帯を膨らませたり位置をずらしたりして、閉じやすくすることを目指す。例えば、片側声帯まひに対しては〔1〕鼻から内視鏡を挿入するなどして、声帯にコラーゲンやヒアルロン酸などを注入し膨らませる〔2〕口の中から声帯に患者自身の脂肪などを注入して膨らませる〔3〕喉の皮膚を切開し、まひした声帯の位置を調整する―の三つの方法がある。

 いずれも有効だが、〔1〕と〔2〕で注入したものは徐々に体に吸収されてしまい、手術後1~数年で効果が弱まり再治療が必要になる、という課題がある。

 声帯まひの治療は、耳鼻咽喉科の「音声外科」という分野が担当している。中村医師は「専門医の数は限られるので、インターネットなどで情報を集めて受診するといいでしょう。1年間に診療する声帯まひ患者の数が多いかどうかが一つのポイントです」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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