治療・予防

対策は保温、初の治療薬も
~免疫異常による貧血―慢性寒冷凝集素症(NTT東日本関東病院 臼杵憲祐部長)~

 寒さにさらされたときにめまい動悸(どうき)がしたり、指先が急に白や紫色に変わったりして痛む。こんな症状が出たら、免疫異常による貧血「慢性寒冷凝集素症」かもしれない。NTT東日本関東病院(東京都品川区)血液内科の臼杵憲祐部長に話を聞いた。

慢性寒冷凝集素症の特徴

慢性寒冷凝集素症の特徴

 ◇4度前後で症状

 貧血にもさまざまな病因、病型がある。寒冷凝集素症は、免疫異常により自分の体の組織を攻撃してしまう自己抗体ができる自己免疫疾患の一つ。「この自己抗体が酸素を運ぶ赤血球と結合し、赤血球が破壊され寿命が短くなり(溶血)、貧血を来す自己免疫性溶血性貧血の中で、高齢女性に多いのが慢性の寒冷凝集素症です」

 自己抗体が赤血球に結合する反応は、血液の温度によって異なり、寒冷凝集素症に関しては体温より低い場合に結合反応が強くなる。

 「寒気や冷水などで低温にさらされたときに血液の温度が低下します。特に血液温度が4度前後になると、自己抗体が赤血球に盛んに結合し、赤血球の塊を作ります。それが原因となって貧血が強まると同時に、指先などへの血液の流れが悪くなる循環障害を起こします」

 ◇冷たい飲食物にも注意

 循環障害が起きると、指先が白や紫色に変わる「レイノー現象」、四肢末端、鼻先、耳たぶが紫色になる「チアノーゼ」、皮膚に赤または紫色の網目模様(網状皮斑)が表れる。「夏に冷たい飲食物を取ると、循環障害により食道や胃の辺りに痛みや不快を感じる人もいます」

 対策としては、「寒冷を避け、保温に努めることが大切。冬であれば室内を温め、外出時は防寒用の靴、靴下、手袋、耳当てなどを必ず着用します。冷蔵庫に手を入れる際に手袋を使う患者さんもいます。冷たい飲食物は取らないようにしましょう」

 寒さ対策をしても症状がひどく、生活に支障を来す場合は治療を受ける。「リツキシマブという抗体療法薬を使った治療が有効とされていますが、健康保険が使えません。今年、寒冷凝集素症に対する初の治療薬となるスチムリマブという薬が承認されました。貧血改善に高い効果があるとされています」。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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