治療・予防

我慢できない尿意
~過活動ぼうこう(山梨大学医学部付属病院 武田正之名誉教授)~

 尿が十分にたまっていないのに、ぼうこうが異常に収縮する過活動ぼうこう。強い尿意を感じて我慢できない「尿意切迫感」が特徴で、トイレが近く、間に合わずに尿が漏れたりする病気だ。

 2022年9月に発刊した「過活動膀胱(ぼうこう)診療ガイドライン第3版2022」の作成委員長である山梨大学医学部付属病院(山梨県中央市)泌尿器科の武田正之名誉教授は「高齢になるほど尿トラブルで悩む人が増えますが、諦めないでほしい。過活動ぼうこうは、多くの場合、生活習慣や体操、薬物療法によって症状が改善します」と話す。

過活動ぼうこうの主な症状

過活動ぼうこうの主な症状

 ◇加齢や肥満の影響も

 ぼうこうは脳と信号をやりとりし、排尿時以外は緩んで尿をため、排尿時に収縮する。過活動ぼうこうでは、さまざまな原因でこの働きが低下し、自分の意志とは関係なくぼうこうが収縮したり、異常に強い尿意を感じたりする。

 武田名誉教授は「過活動ぼうこうの主な症状として、尿意切迫感に加え、通常は頻尿(排尿が昼間8回以上、夜間1回以上)があります。尿意を我慢できずに漏らしてしまう切迫性尿失禁も少なくありません。外出や運動をためらうなど、生活に影響が大きい病気です」と説明する。

 原因が特定できないケースもあるが、「脳や脊髄の病気(脳卒中の後遺症や脊髄損傷など)で起こる他、男性では前立腺肥大症に合併するケースが多く、尿が出づらくなるためにぼうこうが何とか尿を出そうとして過活動になります」

 女性では、出産や加齢、肥満などで内臓を支える骨盤底の強度が低下するため、おなかに力を入れたときに尿が漏れる腹圧性尿失禁が多い。その影響で、脳とぼうこうの連携が乱れて過活動ぼうこうを併発するケースもよく見られるという。

 ◇悩まず受診を

 過活動ぼうこうの診断は、問診や排尿日誌(排尿時刻・量、飲水量などを24時間記録)、尿検査や超音波検査などで行う。治療はまず、生活習慣の改善、ぼうこう訓練(尿意を我慢して、ぼうこうにたまる尿量を少しずつ増やす)や骨盤底筋体操(骨盤底の筋力強化)に取り組む。

 武田名誉教授は「寝酒や過度な飲酒は夜間頻尿の原因になります。水分摂取の時間帯、種類・量を適切に調整します。肥満の場合は、減量や骨盤底筋体操が有効です」と話す。

 薬物療法は、ぼうこうの過剰な収縮を抑える抗コリン薬や、ぼうこうを広げて尿をためる機能を高めるベータ3刺激薬などを服用する。前立腺肥大症では、アルファ遮断薬を服用して効果が不十分な場合に、抗コリン薬やベータ3刺激薬を併用する。

 武田名誉教授は「頻尿や尿失禁があれば、一人で悩まずかかりつけ医に相談し、必要に応じて泌尿器科専門医の受診を勧めます」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】


新着トピックス