レム睡眠行動障害
~睡眠中に突然叫ぶ(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 栗山健一部長)~
睡眠中は、脳が休まっているノンレム睡眠と脳がおおむね活動しているレム睡眠が約90分周期で交互に訪れる。レム睡眠では、知的活動をつかさどる大脳新皮質が覚醒に近い状態にあり、夢の大半はこの間に見ている。夢の内容に応じて体が動いてしまうのが、レム睡眠行動障害だ。
「突然大声で叫んだり殴り掛かってきたりしたことに、隣で寝ている人が驚き、病気が見つかるケースが多いです」と、国立精神・神経医療研究センター・精神保健研究所・睡眠・覚醒障害研究部の栗山健一部長は話す。
夢の内容に体が反応するレム睡眠行動障害
◇幅広い世代で発症
そもそもレム睡眠中は怖い夢や、ネガティブな感情を刺激する夢が多いという。ノンレム睡眠中と比較すると、レム睡眠中の夢はリアルな動画のようで、それが暴力的な行動につながりやすいと考えられている。
「軽症の場合、寝言や叫び声を発する程度なので、単身生活者だと症状に気付かないケースもあります。重症になると、寝ぼけて起き上がったり、ベッドや階段から落ちたり、壁を殴ってけがをすることもあります」
レム睡眠行動障害は20歳代の若い人を含め幅広い世代で見られるが、米国の調査では65歳以上の有病率が高かった。
「本来、レム睡眠中は筋肉の緊張が緩み、動作ができない状態にありますが、緊張が解けないと夢の内容に応じて体が動いてしまいます」。理由の一つは脳の老廃物質が適切に排出されず、筋肉の緊張をつかさどる脳の部位にたまるためと考えられている。またストレス、飲酒、睡眠不足がきっかけで症状が表れるケースもあるという。
◇生活改善が重要
診断の際は、脳波や眼球の動きなどで睡眠時の体の変化を見る睡眠ポリグラフ検査が重要になる。ビデオ録画も併用し、特徴的な行動が出現しているかどうかを確認する。また、レム睡眠中に筋肉が緊張している状態があることを確認する。
治療では、筋肉の緊張を和らげるために、抗てんかん薬や抗不安薬が用いられるが、夜中の転倒リスクなどもあるため注意が必要だ。それより重要なのは、習慣的に運動する、ストレスをためない、飲酒は控える、睡眠不足は避けるなどの生活習慣の改善だという。
「時間がたつと症状が減るケースが多いですが、パーキンソン病やレビー小体型認知症など他の病気に発展するケースもあるため、定期的な診察が必要です。疑わしい症状があるときは、まずは睡眠障害を専門とする医療機関にご相談ください」と栗山部長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/06/10 05:00)
【関連記事】