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熱中症に備えよう=大事な室温管理、食事にも配慮

 ◇3栄養素で疲労防止

 熱中症を予防するためには、小まめな水分補給は欠かせない。喉が渇く前に、意識的に水分を取りたい。同時に、食事にも気を配ることも必要だ。健康に配慮した定食メニューを提供するタニタ食堂の管理栄養士である甲阪絢佳さんは「バランスの良い食事が基本。疲れにくい体をつくっていくことが熱中症予防にも重要だ」と強調する。 疲れにくくするにはどうしたらよいか。甲阪さんは「ビタミンB1、カリウム、クエン酸という三つの栄養素が大切だ」と言う。

 ビタミンB1は糖質の代謝機能を助ける重要なビタミン。不足すると、疲労物質の乳酸がたまりやすくなる。玄米や豚肉、ウナギ、タイ、野菜ではグリーンピースやニンニク、モロヘイヤなどに多く含まれている。カリウムは細胞中の血流の浸透圧を維持・調整し、体内の余分な塩分を外に出す。夏場は汗をかき塩分が失われるが、もともと日本人は塩分を取り過ぎる傾向がある。カリウムを多く含むのは、ホウレンソウやパセリ、サトイモ、ニンニクで、果物はバナナやメロン、キウイなどがよい。

 三つ目の栄養素、クエン酸にも有機酸として疲労の回復を早める効果がある。レモンやグレープフルーツ、パイナップル、キウイなどの果物や、酢、梅干しなどに効果が期待できる。

 食事は「5色」を目指す

 ただ、特定の食材だけに特化するのは逆効果になることもある。食事はとにかくバランスが大事、と甲阪さんは繰り返す。

 「糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの五つが取れていること。食材を、『赤』、『白』、『黄色』、『緑』、『黒』の5色に分けると、理解しやすい」

 「赤」はたんぱく質である動物の肉や魚、「白」は穀物や乳製品などだ。「黄色」は卵や大豆製品、「緑」は野菜類。「黒」はキノコ類や海藻、ゴマなどを指す。といっても、1回の食事で「5色」すべてを満たすのは難しいかもしれない。しかし、初めから無理をする必要はなく、「1回の食事ではなく、まずは1日の食事で『5色』で取り入れ、段々と1食で『5色』に近づけてほしい」と甲阪さんは話す。


 取材で丸の内タニタ食堂(東京都千代田区)を訪れた5月26日。この日のメニューの一つがポークハンバーグ定食だった。豚のひき肉のハンバーグにご飯とみそ汁。ニンジンやブロッコリースプラウト、マッシュポテトなど野菜がたっぷり添えられている。1日に必要な野菜の摂取量は350グラムとされ、この1食で80%をカバーする。カロリーについても、一般的な定食は700~800キロカロリーだが、589キロカロリーに抑えられている。


 昼食などをコンビニの商品で済ます人は多い。甲阪さんは「おにぎり1個だけでなく、みそ汁やスープ、サラダを足す。パンなら菓子パンでなく、具材が入ったサンドイッチを。弁当は品数が多いものを選びたい」とアドバイスする。熱中症予防の観点から甲阪さんが勧める果物がスイカ。90%は水分だが、マグネシウムなどミネラルが豊富だ。ただ、糖分を含むため食べ過ぎは良くない。一切れ(約200グラム)が目安と言う。(喜多壮太郎、鈴木豊) 

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