治療・予防

嘔吐や腹痛、消化物通過しにくい
~腸が血管に挟まれる―SMA症候群(筑波大学付属病院 後藤悠大医師)~

 嘔吐(おうと)や腹痛などの症状が表れる上腸間膜(じょうちょうかんまく)動脈(SMA)症候群。原因は、胃に続く十二指腸の一部が二つの血管に挟まれ、消化物が通過しにくくなるためだ。筑波大学付属病院(茨城県つくば市)小児外科の後藤悠大医師に原因と対処法を聞いた。

SMA症候群(断面のイメージ)

SMA症候群(断面のイメージ)

 ◇緑色の嘔吐

 胃で消化された食べ物は、十二指腸で膵液(すいえき)や胆汁(たんじゅう)などの消化液と混ざり、小腸に送られる。SMA症候群では、太い大動脈と、そこから分岐した血管「SMA」の間で十二指腸が圧迫され、通過障害を起こす。食べた物が通過できず次の小腸に送られない。このため吐き気嘔吐、腹痛、体重減少、痩せ、食欲不振などの症状を起こす。

 吐いた物は、胆汁を含むため緑色がかっているのが特徴。大人も子どもも発症するが、これらの症状が全て表れるとは限らず、症状のみで診断するのは難しいという。

 多くの人は、SMAと大動脈の間に十分な脂肪があり、十二指腸が圧迫されることはないが、痩せている人は脂肪が少ないため圧迫の恐れが高まる。例えば、神経性痩せ症などの摂食障害や、食事摂取が困難な病気がある人だ。ダイエットによる急激な体重減少、成長期に身長の伸びに対して体重の増加が追い付かない場合もSMA症候群のリスクになる。

 重度心身障害、背骨がねじれるように曲がる側湾症、骨折などで長期入院した場合などもリスクだが、そのような背景なしに急に発症することもある。

 ◇体位変換や栄養摂取で

 治療としては、腹ばい、または左側を下にして横になると十二指腸が圧迫されないため症状が軽快する。食事は少量ずつ回数を多く取り、必要に応じて腸に直接栄養を補給する経管栄養を行うと、十二指腸の周囲に脂肪がついて圧迫が和らぐ。「患者の8~9割は、こうした対応で2週間から1カ月ほどで軽快します」。手術をすることは少なく、特に未成年者では慎重に検討するという。過度な痩せ志向があるなどで食欲が戻らない場合は、精神科と連携することもある。

 後藤医師は「食事と関連する腹痛、緑色の嘔吐食事が取れないなどといった状態なら、医療機関に相談しましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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