治療・予防

国内で発生リスク
~狂犬病防ぐには(大分大学 西園晃教授)~

 狂犬病は、狂犬病ウイルスを持つ動物にかまれるなどしてウイルスが脳内に侵入し、錯乱やけいれんなどの激しい症状が表れ、ほぼ100%死に至る。大分大学医学部(大分県由布市)微生物学講座の西園晃教授は「国内では根絶されましたが、世界的には発生地域が多く、ウイルスを持ち込まれるリスクは否定できません」と警戒する。

狂犬病ウイルスで感染

狂犬病ウイルスで感染

 ◇世界で年6万人死亡

 国内で感染し発症した事例は、人では1956年、動物では57年を最後に報告されていない。狂犬病予防法に基づく市町村への犬の登録と年1回の予防接種、厳重な検疫が功を奏したからだ。

 一方、世界では150以上の国と地域で発生し、年間約5万5000人が死亡している。「特に東南アジア、アフリカで多い。海外で犬にかまれて国内で発症したケースは、この60年間に4例ありました」。キツネ、コウモリなども狂犬病ウイルスを媒介する。

 潜伏期間が通常1~3カ月程度と長いため、その間にワクチンを繰り返し接種するなどの対応で発症を予防できる。海外で犬などにかまれたら、「すぐ水とせっけんなどで傷を十分に洗い、速やかに現地の医療機関を受診し、ワクチンを所定のスケジュールで接種してください」。

 海外で野生動物に触れたり、医療機関へのアクセスが悪い地域に滞在したりするときは、「出発1カ月~2週間前をめどに病院の渡航外来やトラベルクリニックで、ワクチン接種を相談するとよい」。

 ◇犬に予防接種

 世界保健機関(WHO)は、撲滅に必要な犬の予防接種率を70%としている。国内(2022年度)は登録頭数の70.9%だった。ただし、西園教授は接種率が徐々に低下していることを懸念する。

 「未登録の犬も一定数いて、接種を受けていない可能性があります。海外からウイルスが持ち込まれた際、集団免疫があるとは言い切れない状況です。ペットの犬には予防接種を施し、家族の一員として最期まで飼ってください」と呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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