長引くせきと熱に注意 マイコプラズマ感染症
鼻や口からマイコプラズマという菌が入り、呼吸器の症状を引き起こす「マイコプラズマ感染症」。4年に1度ほどの頻度で流行し、以前は「オリンピック病」とも呼ばれていた。なごみクリニック(横浜市)の武井智昭院長は「肺炎だけでなく、心筋炎や髄膜炎、腎炎などにも重症化するケースがあるので、軽く見ないでください」と警鐘を鳴らす。
◇長期化するせきと熱
マイコプラズマ感染症は小児や若い人に多く発症する。風邪やインフルエンザのように急性の症状ではなく、せきが徐々に表れ、37~38度ほどの熱が4~5日続き、ゆっくりと悪化する。潜伏期間は14~21日といわれ、初期の頃は風邪と見分けがつかない。
「6歳以上の小児肺炎の原因菌では一番多く、40~50%がマイコプラズマによるものです」と、武井院長は説明する。
感染して直接症状を起こす肺炎球菌やインフルエンザ菌とは違い、マイコプラズマは感染部位の免疫反応を過剰にさせ、結果的に肺炎などの症状を引き起こす。
「免疫力が弱い2歳以下では、肺炎球菌やインフルエンザ菌が原因となる肺炎が大半ですが、年齢とともに免疫がしっかりしてくると、マイコプラズマによる症状が出やすくなります」
マイコプラズマは20~30代の成人が感染することもあるが、家族内で感染すると、肺炎を起こすなど、子どもよりも重い症状が出やすいという。
◇抗菌薬が効きにくく
感染の確認には、喉の奥を拭う検査法があるが、マイコプラズマはゆっくりと増殖するため、陽性反応が出にくい傾向があり、「感染しているにもかかわらず、検査では陰性ということもあり得ます」と武井院長。
そのため、感染が疑われた時点でマクロライド系の抗菌薬を処方することが多いが、近年は耐性を持つマイコプラズマが増加し、マクロライド系抗菌薬が効きにくくなっている。武井院長も「小児の7~8割が、耐性菌による感染というデータもあります」と懸念する。
4~5日服用して症状が治まらない場合は、テトラサイクリン系やニューキノロン系という種類の違う抗菌薬に切り替えていく方法が取られる。
熱が下がり、症状が治まれば登園や登校は可能だが、中には心筋炎や髄膜炎、腎炎などへと重症化するケースもあるので軽視は禁物だという。
武井院長は「他の感染症同様、手洗いやうがい、マスクをするなどして予防に努め、熱やせきが長引いたら迷わず受診してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2017/11/24 14:50)