インタビュー

ギャンブル依存は病気、回復可能=目指すは治療プログラムの普及
 松下幸生・国立病院機構久里浜医療センター副院長

 ◇「負けの深追い」に気づいて

 ギャンブル依存症は、病気なのに診療を受けていない患者の割合がアルコール依存症などと比べて高い。「借金や犯罪行為でにっちもさっちもいかなくなって、ようやく受診する人が多い」と松下副院長。せっかく治療を受けるようになっても、途中で来院しなくなってしまう人もいるという。

 本人はなかなか、自分が依存症患者だとは認めたがらない。「病気だと分からないまま、『自分の性格が悪いのでは』『意志が弱いからでは』と悩んでいる時期が長いという特徴もある。罪悪感ばかりが募ってしまうのも危険です」。やはり「回復可能な病気」という視点で早めに治療することが大切だ。

 家族をはじめとする周囲の人も早い段階で、各地の精神保健福祉センターや保健所といった専門機関に相談したり、治療に行くよう本人の背中を押したりすることが望ましい。そのタイミングを分かりやすく示すサインとして、松下副院長が挙げるのが「負けの深追い」。先に挙げた米国精神医学会の診断基準でも取り上げられている「問題賭博行動」だ。

 「ギャンブルで負けた金をギャンブルで取り返すと、ほとんどの人は言う。例えばパチンコなら『1万円すったから次の日に取り返す』といった具合に話すが、冷静に考えれば確率的におかしいと分かるはず。傷口を深くしないうちに、気づいてほしい」

「ネットを使ったギャンブルにはまる人も結構います」

 ギャンブル依存症をめぐっては、同センターの樋口進院長が中心となり、全国共通の標準的な治療・回復プログラムをつくる研究が進められてきた。2020年度の診療報酬改定にその成果を反映させ、一部の専門医療機関にとどまっている治療を全国的に広めていくのが目標だ。

 「これからプログラムの効果を検証していこうという段階。現在はギャンブル依存症患者を診たことがないという精神科医がほとんどだが、どこでも同じプログラムで治療を受けられるようになれば、救われる人が増えると思います」(水口郁雄)

■ 2月25日、横浜で国際フォーラム ■

 久里浜医療センターが主催する「第1回国際ギャンブル・ネット依存フォーラム」が2月25日、横浜市西区みなとみらい3の1の1の「はまぎんホール ヴィアマーレ」で開かれる。英国やドイツ、韓国のギャンブル治療・研究者の講演や国内からの発表に加え、ギャンブル・ネット依存の予防についてのシンポジウムも予定されている。同センターは依存症患者や家族にも来場を呼び掛けている。(了)


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