特集

粒子線注目も、治療費ネック
がん新治療法、外国勢猛追

 ◇副作用少ないメリット

兵庫県立粒子線医療センターでの治療の様子(提供写真)
 粒子線治療は一定の深さでエネルギー量が最大になるのが特徴。病巣に十分な放射線量を当てることができる上、病巣から後方の放射線量がほぼなくなるので、病巣より深い部位では副作用を起こさないというメリットがある。
 治療は痛みもかゆみも伴わない。成人の場合、治療室に入ってから10~20分程度で治療が終わる。通院治療も可能で、日常生活に及ぼす影響が小さいことも長所だ。

 ◇待たれる保険適用

 粒子線治療を普及させるには、約290万円という高額な治療費がネックとなる。この治療は、厚生労働省が例外的に混合診療を認めている「先進医療」に当たり、患者が民間保険で賄えない場合は全額自己負担となるためだ。
 16年4月に、骨や筋肉、皮下組織などの軟部の切除不能な骨軟部腫瘍への重粒子線治療と、20歳未満の小児がんに対する陽子線治療について適用されるようになるなど適用範囲の拡大が進む。
 しかし、患者が圧倒的に多い肺がん肝がんなどは適用外のままだ。厚労省担当者は「現時点では十分に安全性や有効性が確立されているとは言えない。費用が高い治療法でもあり、昨今の財源難の中で費用に見合う効果があるのかという問題もある」と話す。

 ◇「粒子線は有効な治療法」

兵庫県立粒子線医療センターの沖本智昭院長
 県立センターの沖本智昭院長は「粒子線治療はすべてのがんに効く夢の治療法ではないが、肝がん膵がんなどの治療に有効なのは間違いない」と話す。粒子線治療の現状について「日本では放射線医が少なく、外科手術と投薬ががん治療のメイン。治療の窓口が基本的に外科のため、選択肢として提示されないケースも多い。末期がんでわらにもすがりたい患者からすれば、選択肢は増えた方がいいに決まっている」と強調する。
 費用対効果について、同院長は「抗がん剤治療で保険適用されるものでも年間1500万円程度かかるケースがあり、粒子線治療が必ずしも割高とは言えない」と主張する。


新着トピックス