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つらい男性の頻尿
前立腺肥大でダブルパンチ

 夜、何度も目が覚め、トイレに行く。昼間でも、若い時よりも排尿が終わるまでの時間が長く、爽快感もない。目的地に着くまでに何度も公衆トイレに寄らなければならず、いつしか外出を避けるようになる。頻尿(過活動ぼうこう)は生死に関係がないとはいえ、生活の質(QOL)に大きく影響する病気だ。
 一時期から、女性の過活動ぼうこう症が注目されたが、これは女性だけの問題ではない。東京慈恵会医科大学泌尿器科学主任教授の頴川晋氏は、男性の方がよりつらいケースも多いと言う。「前立腺肥大症と過活動ぼうこう症が、ダブルパンチとなる」からだ。

 ◇尿道を圧迫
 前立腺=用語説明= が肥大していると、尿道が圧迫される。水道のホースの詮を締められているような状態になり、尿の勢いが衰える。もっと尿を出そうとしてぼうこうの筋肉がグッと収縮する。「圧迫の度合いが強いと、収縮する癖がつく。言ってみれば、筋肉がもりもりのぼうこうになってしまう」。通常は400 cc以上の尿がたまった段階で如意を我慢できなくなる。しかし、収縮癖のついたぼうこうでは、そのずっと前に尿意を我慢できなくなる。トイレに行ったばかりなのに、すぐにまたトイレに行きたくなる。
 「さらに男性の場合は、残尿という問題がある」と、頴川教授は指摘する。「100%の尿がたまっているとすると、子どもはすぐに尿が出る。ところが、ぼうこうが前立腺に押さえ付けられていると、70%しか尿が出ない。だから、トイレに行く回数が増える」。頴川教授が「ダブルパンチ」と言うのは、この点だ。

 ◇まず薬で治療
 前立腺肥大症は、4 0 歳以上の男性の約8 割に見られる。治療が必要となる人はその2~3 割と考えてよい。「前立腺肥大症は生き、死にに関わる病気ではなく、患者のQOLを良くすることが目標だ。ただ、同じ年代で前立腺がんになる人もいる。専門としない医者がリンパ節に転移するがんを見逃すケースもないわけではない」
 前立腺肥大症の治療は一般的には内服薬から始める。昔は即効性に乏しい薬しかなかったが、1 9 9 0 年代にアルファブロッカーという薬の登場で状況が変わった。「高血圧の薬として開発されたが、高血圧に対しては全く効果がなかった」。ところが、この薬を飲んだ患者の尿が出やすくなった。頴川教授は「血管の筋肉は緩まなかったが、尿道の筋肉は緩んだ。ひょうたんからこまだ」と笑う。
 一方、ぼうこうの筋肉が勝手に縮んだりする過活動ぼうこうに関する研究が進み、過活動をコントロールする薬も出てきた。「私の若い頃に比べて、この分野の治療効果は格段に進んだ。患者にとって有効な選択肢が増えた」

 ◇ 9 7歳で手術も

 しかし、薬には限界もあり、手術が次の選択肢となる。「前立腺が非常に大きくなると、薬による治療では無理だろう。残尿が非常に多くて、外科的に前立腺を切り取らなければならないケースもある」。手術である以上、100% 安全というわけではないが、前立腺肥大症の手術のリスクは決して高くはない。頴川教授が手掛けた最高齢の患者は9 7歳。尿が出なくなって、にっちもさっちもいかなくなったので手術に踏み切ったと言う。
 そこまでいかなくても、手術を望む患者もいる。前立腺の肥大はストップすることがない。5 年後、1 0 年後により症状が重くなることを考え、あまり年を取らないうちに手術を受ける。「手術を受けるメリットとデメリットのバランスを考え、個人の価値観やライフスタイルに応じて選択してほしい」と、頴川教授は説明する。

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