Dr.純子のメディカルサロン

喫煙者と禁煙者の壁、どうなくす? 長谷川一男・日本肺がん患者連絡会理事長


 海原 米国モンタナ州のヘレナという都市でレストランやバーを全面禁煙にしたら、心筋梗塞が激減したという2004年の報告で、受動喫煙が心筋梗塞の発生リスクを高めるという研究報告ですね。

 今年の世界肺がん学会でも座長をなさると伺いました。今後のご活動について教えください。


 長谷川 米国のメイヨークリニックと日本対がん協会は、グローバルブリッジという禁煙対策を進めており、日本では16団体が参加して取り組みが始まりました。私たち、日本肺がん患者連絡会も参加しています。内容は、肺がん患者の周りにいる方々への禁煙の勧めです。

 そこで、身近にいる喫煙者の家族、友人、同僚などに禁煙を勧めるプロジェクトに挑戦することにしました。その同じ志を持つ仲間と、第1回の会議が近く行われます。みんなでアプローチを考えるところから始まります。対立しないアプローチを考えたいです。ぜひ応援してください。

 最後に、この受動喫煙の法律を厳しいものにしてほしいという活動は、3年前に出した冊子(web版はこちら)から始まっています。

 実は受動喫煙に関して啓発していくことに最初、ためらいがありました。私は非喫煙者でしたが、周りにはたくさんの元喫煙者の肺がん患者がいます。たばこの害を訴えることは、その周りの仲間を傷付けることにつながるかもしれない、と思ったからです。

 しかし、ある仲間が私の背中を押してくれました。「俺はたばこを吸っていて肺がんになった。後悔している。病気になってからでは遅い。だから今、訴えないといけない。やりましょうよ」

 そう言ってくれて、この活動は始まりました。冊子には、その仲間の思いのこもったメッセージが載っています。その仲間は1カ月前に亡くなりました。法律ができたことを一番喜んでいると思っています。


 海原 この冊子は素晴らしいと思いました。ぜひ多くの方に読んでいただき、知ってほしいと思います。長谷川さんのこうした活動に力づけられる方がたくさんいらっしゃるのですね。

 また、お話を聞かせてください。きょうはありがとうございました。

                               (文 海原純子)


長谷川一男(はせがわ・かずお)

 NPO法人「肺がん患者の会ワンステップ」代表も務める。1971年東京都生まれ。横浜市で妻、子ども2人との4人暮らし。喫煙歴はないが、2010年に肺がんを発症し、現在ステージ4。患者の声を医療関係者や行政などに伝えて現状の改善を目指すアドボカシー活動の功績を認められ、16年に世界肺癌学会の「ペイシェント・アドボカシー・アワード」を受賞。



メディカルサロン