Dr.純子のメディカルサロン
熱中症後の心のリスクに注意 第23回
やっと過ごしやすい気温になりました。今年の夏は特別な暑さでした。連日、熱中症で救急搬送される患者数が報告されましたが、暑さが収まった今、気になることがあります。熱中症後、気温の変化に敏感になり、ちょっとした気温の変化でまた症状を起こすのではないか―。そうした不安がきっかけでパニック発作を起こす方のことです。
熱中症を経験、その後にパニック発作
20代のA子さんは今年8月、出張中に歩いていて汗がかつてないほど出ました。突然、吐き気がし、めまいが起こり、歩行困難になってコンビニ横のベンチに倒れ込みました。店員さんが気付いて救急車を呼んでくれ、搬送されて入院。症状はかなりひどく、特に出張中ということもあって家族にも連絡が取りづらく、不安な気持ちと仕事の心配を抱えて過ごしたそうです。
数日で回復して体調も戻り、仕事に復帰しましたが、それ以降、気温の変化がとても気になるようになりました。涼しくなっても、ちょっと蒸し暑いと「また熱中症になるのではないか」と不安で、暑い日に外出するのが怖く、息苦しくなります。
熱中症のつらい記憶があり、「暑いと嫌だな」という不安感の中でパニック発作を起こしてしまった、という状況だと思われました。一度パニック発作を起こしたことで、また起こすのではという予期不安を抱えてしまい、通勤がさらにつらくなってしまったのです。
パニック発作とパニック障害の違い
A子さんのように熱中症の後、不安を抱えている時に電車内で衣類の柔軟剤やヘアスプレーの強い香りでパニック発作を起こし、その後、予期不安を抱く方などから相談を受けることもあります。パニック発作は息苦しさや震え、発汗などを伴う症状で、死ぬのではないかと思うほどのつらさを引き起こします。こうした発作を何度か繰り返しているうちに「また起こすのでは」という不安が強くなり、その不安から再び発作を起こしてしまう。これがもとになり、外出できなくなったり、仕事に支障を来たしたりする状況が「パニック障害」です。
パニック発作は精神的な問題だけでなく、就寝中などにも血中の二酸化炭素濃度などの影響で起こることもあるといわれています。ですから、必ずしも心の問題だけで起こるわけではありません。しかし、何度か発作に見舞われることで予期不安が起こり、発作が誘発され、これがもとで日常生活に支障を来たすと、これは心の問題になります。
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(2018/10/10 11:03)