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インフルエンザ、注射にプラスして予防効果のある方法とは 浦島充佳・東京慈恵会医科大学教授


 浦島 この研究発表の後、世界的に上気道感染症に対してビタミンDを投与する研究が行われるようになりました。私たちは、こうした研究者たちに声を掛け、国際共同研究により、ビタミンDサプリメントが、感冒から肺炎までの急性気道感染症の2割を予防することをメタ解析という手法で示しました。

 ですから、小児科でインフルエンザや風邪を予防するにはどうしたらよいかという質問に対して、「子供は元気であれば、たくさん外で遊ばせてください」と説明するようにしています。

 ◇冬こそ日に当たることが大事

浦島教授の近著

浦島教授の近著

 海原 なるべく室内の温かい所にいるようにしている方も多いと思うので、発想の転換が必要ですね。大人も、冬場はランチタイムの12時に日射量が1日のうちで一番多いので、オフィスから食事に出掛けて行く方がいいのではないでしょうか。そこで、企業の総務の方などがオフィスでインフルエンザ予防対策をする場合、必要なことを教えてください。

 浦島 換気をしっかりすることです。寒くなると窓を閉め切ることが多いと思いますが、時々空気を入れ替えることが大切です。

 海原 以前、窓のない部屋で受験勉強の補習を受けていた学生が集団でインフルエンザ感染を起こしたということがありましたね。寒いと閉め切りになりやすいし、窓がなかったり、24時間換気の設備がなかったりする教室や会議室などは要注意ですね。

 浦島 インフルエンザは発症1日前くらいから感染力があるといわれています。また不顕性感染といって、熱が高くならないインフルエンザもあります。ですから、インフルエンザが流行している時期で、熱が無くとも、ちょっと身体に違和感があるようなら、早退するなり、在宅勤務に切り替えるなりした方がよいと思います。あるいは、そのようなことができる雰囲気やシステムを普段からつくっておくことも重要だろうと思います。

 海原 予防注射だけでなく、冬は日差しに親しむという意識も、インフルエンザ予防に大事なんですね。浦島先生、ありがとうございました。

(文 海原純子)
 


 浦島充佳(うらしま・みつよし)

 1962年生まれ。東京慈恵会医大卒。小児科医として小児がん医療に献身。ハーバード大大学院にて予防医学・危機管理を修了し実践中。2018年6月に『病気スレスレな症例への生活処方箋』(医学書院)を出版。

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