FEATURE レポート紹介

社会的な健康に寄与する活動を
=公衆衛生に関する委員会-SCOPH=

 SCOPH(Standing Committee On Public Health)は、日本最大級の医療系学生団体IFMSA-Japanの常設委員会の一つだ。「公衆衛生を通して地域社会に貢献し、幅広い視野を持った医療人を目指す」を理念に、啓発活動や健康教育などに取り組んでいる。

広義ゆえ難解な公衆衛生に挑む

SCOPHが取り組む公衆衛生は、環境衛生や食品衛生など、多くの分野から成り立っている。広義ゆえに難解で、勝見英徳さん(久留米大医学部5年)は「公衆衛生学者のウィンスロー氏の言葉を借りて簡潔に説明するなら、公衆衛生は『組織化されたコミュニティーの健康促進を担う科学や技術』となります。コミュニティーには地域や都市、家族などいろいろな言葉を当てはめることができます。この考え方や活動について医療系学生を啓発し、自ら実践していくのがSCOPHの主な活動になります」と話す。
 SCOPHは、「Africa Village Project」「Asia Community Health Project」「地域医療ツアープロジェクト」「Healthy Lifestyle Project」「ぬいぐるみ病院Project」の五つのプロジェクトに基づいて活動している。敦賀梨帆さん(旭川医科大医学部3年)は「活動地域はアジアやアフリカなど多くの地域にわたりますが、コミュニティーの対象やアプローチの方法が違うだけで、根本にあるのはどれも同じです。活動の対象地域で健康の促進を図るのが私たちの目的です」と説明する。

「Africa Village Project」によるザンビア派遣の様子

左から野﨑小百美さん(東京女子医科大5年)、
勝見英徳さん(久留米大5年)、敦賀梨帆さん(旭川医科大3年)

全国約30大学が実施している「ぬいぐるみ病院Project」

Think Globally, Act Locallyの実践

SCOPHのメンバーは興味のある分野、挑戦したい分野を選び、それぞれのプロジェクトに参加している。
 それぞれの活動を見ると、「Africa Village Project」は、アフリカのザンビア共和国に医療系学生を派遣し、公衆衛生を学んでもらう。無医村の地域にヘルスポストと呼ぶ診療所のような施設を建設する企画にも挑戦している。資金集めのために法人に営業活動を行うことも。「Asia Community Health Project」も同じように、アジア地域、特にインドのNGOへ医療系学生を派遣し、公衆衛生を学んで地域貢献を実践している。
 グローバルな活動の一方、地域密着型の「ぬいぐるみ病院Project」も展開。ぬいぐるみを使った病院ごっこで日本の子どもたちに健康の在り方を伝えている。大きなコミュニティーから小さなコミュニティーまで、SCOPHはIFMSA-Japanがうたう「Think Globally, Act Locally」を文字通り実践している委員会と言える。

医学的根拠に基づいた
健康的なメニューの開発なども行っている

公衆衛生は体験することで面白さが見えてくる

医療系学生が医師や看護師を目指す上で、身体的、精神的な健康に強い関心を持つのは当然だ。一方、公衆衛生は社会的な側面から健康について取り組んでいくため「おろそかになりがち」という。
 「残念ながら公衆衛生について『興味がない』と話す友人は多いです。政策や社会保険制度なども関わってきますし、身体的に健康な方へのアプローチもありますから、医療系学生にとって必要なのかどうか気付きにくい分野でもあります」と勝見さんは現状を語る。その「重要性に気付けるかどうかがポイント」と話すのは、野﨑小百美さん(東京女子医科大医学部5年)。
 「健康について、WHOは『身体的、精神的、社会的に良好な状態であること』と定義していますが、私たちは『社会的な健康』にスポットを当てた活動が多いです。例えば、女性の社会的な地位向上を実現できれば、経済的に豊かになり、家族というコミュニティーの健康につながります。そうした考え方が理解できれば活動の面白さが増すと思います」(野﨑さん)
 座学では難題だが、実際に活動してみると納得できることが多く、目に見えた成果が得られることもある。そうした達成感や面白さを伝えていくことにもやりがいを感じている。
 「公衆衛生は大きな可能性を秘めている分野です。健康に対してアプローチできるのは病院だけではありません。それを知ることで自分たちも広い視野を持った医療従事者になれるはず。素晴らしい体験を一人でも多くの医療系学生と共有していきたいですね」(勝見さん)。