FEATURE レポート紹介

自分たちが暮らす地域に貢献
=横浜市立大医学部YDC=

 横浜市立大医学部YDC(Yokohama Dream Catchers)は2007年に創部された横浜市立大の医療系サークルだ。医学部の医学科と看護学科から合わせて約30人の学生が参加している。地元小中学校を回って訪問授業を実施することが主な活動だ。

のどかな場所で地域貢献

横浜市の南端、八景島シーパラダイスに近いのどかな場所に横浜市立大の福浦キャンパスがある。横浜市立大学附属病院に隣接し、約600人の医学生が在籍。陸の孤島と言うと大げさだが、周辺には目立った施設や他の大学もなく、日が暮れれば病院の明かりが一番目立つような地域だ。
 「横浜市内ですが静かでのんびりとした場所で、キャンパスも特別に大きいわけではなく、残念ながら華やかさはないですね(笑)。でも、そこに暮らす人たちはいる。こうした場所だからこそ地域に密着した活動が求められるのではないでしょうか」と田邊桃佳さん(横浜市立大5年)は話す。
 YDCは、「大学の地域貢献」という位置付けで、地元小中学校での訪問授業を年に数回実施している。保健の授業に参加し、先生の代わりに医療に関するアドバイスや、大学生活や将来についてのキャリア教育などを行う。また、横浜市内の大学約30校が一堂に集まるイベント「ヨコハマ大学まつり」にも出展。ここでも小中学生対象の授業を行うが、参加希望者が約40人の定員を超えて抽選になるほどの人気ぶりだ。

横浜市立大医学部YDCのメンバー。子供好きの学生ばかり

取材に協力してくれた田邊桃佳さん

小学生に「体のつくり」についての授業を行う様子

正しい医療知識を楽しく学ぶ

「訪問授業では専門的な言葉を避けて分かりやすい表現をすること、クイズなど参加形式にして楽しく教え、学んでもらうことを心掛けています」と田邊さんは話す。
 訪問授業は毎回さまざまなテーマを設定するが、特に力を入れているのが「救急車の使い方」と「病院の使い方」だ。
 近年、救急車が適切に使われていないケースが多いという。横浜市などの大都市になると、そうした事例が増えれば本当に必要なときに救急車が不足する事態につながりかねない。病院の使い方も同じだ。重病や重傷でなければ、いきなり大学病院に行くのではなく、まず地元のクリニックで診察を受けて医師の判断を仰ぐのが「正しい病院の使い方」である。
 「学習指導要領に載っていないような内容ですが、現代社会においてはとても大切な知識であり情報です。早くから子供たちに医療に関する正しい知識を身に付けてもらうのが私たちの目的。救急車や大学病院の現状を伝えて、間接的に地域に貢献できたら、と思っています」(田邊さん)

聴診器など医療器具を使って行う授業は子供たちに大人気

医学生だから伝えられるメッセージ

YDCに集まるのは、子どもが好きだったり、小児科で働くことを目標にしたりしている学生ばかり。根本的に子供と触れ合うのが楽しくてたまらない。以前、YDC宛てに一通の手紙が届いたという。送り主は小学生の女の子。そこには訪問授業のお礼と医療関係の仕事に就く夢が書いてあった。
 「こういう瞬間が喜びですね。小中学生の中には、早くから医療従事者を目指している子どももいます。私たち医学生は、医療従事者と一般の方との中間の位置付けだと感じています。先生と呼ばれる方々のような堅苦しさはないですが、一般の方が身に付けていない医学の知識を持っている。私たちだからこそ伝えられるメッセージがあると実感しています」(田邊さん)。
 小規模の大学にある小規模のサークル。それでも力になれることはあると実感している。活動の幅を広げることよりも、自分たちが住む地域に向けてできることを地道に行うと決めている。草の根的な活動がいつか実を結ぶと信じて。