一流に学ぶ 難手術に挑む「匠の手」―上山博康氏

(第10回)手術で患者が死亡=土下座し謝罪

 北海道大学医学部の筆頭講師になった時、上山氏の人生を変える出来事があった。当時37歳。誰よりも手術がうまいと「慢心」していたが、術中に患者が亡くなってしまったのだ。

 患者は42歳の脳腫瘍の男性。これまで他の病院で何度も開頭手術を受けたが腫瘍が取り切れず、余命半年などと宣告され、いちるの望みをかけて上山氏のもとにやって来た。

 「手術前から気の合う患者で、2人の息子さんがいてね。手術前日に『俺なあ先生、あの2人が成人するまでは生きていたいんだ』って泣きながら手を握って頼まれました。本当に命がけの信頼です。僕は分かりましたって言いました」

 手術では、腫瘍に栄養を与えている内頸(けい)動脈からカテーテルで塞栓物質を流し込み、腫瘍を内側から壊死(えし)させて、血管ごと摘出する計画だった。塞栓物質が腫瘍以外の血管に流れ出さないよう、血管を糸で縛るつもりだった。

 「僕はフライフィッシングで使う毛針の結紮(けっさつ)の仕方を、手術で応用するアイデアを論文で発表していて、その方法なら確実だと考えていました」。ところが術前検討会ではクリップを使う方法に決まった。僕は『どんな方法でもやってみせる』と答えました」

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