一流に学ぶ 角膜治療の第一人者―坪田一男氏

(第13回)近視急増の謎に迫る=バイオレットライトに着目

 

◇ガラスメーカーと共同開発

 子どもの近視に関する大規模な疫学調査によると、右目の方が近視の割合が高く、左目より視力の悪い子どもが多い。これについて、右利きの場合は右目が教科書やノートに近付きがちだから、という仮説が立てられていた。しかし、坪田氏は「多くの学校の窓が左側にあるからではないか」という新たな仮説を立てた。

 「つまり、左目に比べて右目の方がバイオレットライトに当たりにくいことが近視に影響しているのではないだろうか。どこにいてもバイオレットライトが浴びられるように教室の光環境を変えればいいのではないか、と考えました」

 そこで、紫外線を防ぎ、バイオレットライトは透過するガラスを開発すべく、大手ガラスメーカーとの共同研究に着手した。

 「実家がガラス店でしたから、僕も跡を継いでいたかもしれませんでした。ガラスの仕事に関われるのは、すごくうれしい」

 このほか、バイオレットライトを発するLEDライトを使ったデスクライト、バイオレットライトを透過する眼鏡眼鏡の中にバイオレットライトの光源を内臓したメガネなどを開発中で、これらを用いた臨床研究も進みつつある。

 「僕自身は軽度の近視で、いつもは度なしの保湿眼鏡を使用していますが、このバイオレットライト光源を内臓した眼鏡をいま体験的に使っています。ドライアイメガネを掛けていた時もそうでしたが、『変な眼鏡を掛けていますね』とよく言われます。でもこういう新しいことを考えるのがとても楽しい。それがいずれ人の役に立てば、それほどうれしいことはないでしょう?」

 近視を防ぐ方法が確立されるのも、時間の問題かもしれない。(ジャーナリスト・中山あゆみ)


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