一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏

(第6回)
心臓カテーテルの難関究める
ロータブレーターで世界トップクラス

 ◇血管の硬い壁、ドリルで削る

 三角氏が最も得意とするのは、ロータブレーターといわれる先端にダイヤモンド粒子が組み込まれたドリルを使った治療だ。「石のように硬くなった血管を広げるには、より硬いもので削るしかありません。石より硬いのはダイヤモンドなので、ドリルの先端にダイヤモンドの粒子をまぶしてあるロータブレーターを高速回転(1分間23万回)させ、硬くなった血管の壁を少しずつ削っていきます」

 ドリルの高速回転で熱が生じるため、水で冷却しながら削っていく。カテーテルの先端が触れた感じを手の指先で繊細に感じ取り、ドリルの操作を微調整する。ロータブレーターはカテーテル治療の中で最も難しい技術。熟練していなければ、血管を破いてしまう可能性もある。慣れるまで勇気の要る技術だ。

 「最初は恐ろしくて汗だくでやりました。1、2例、合併症が続くと、怖くてできなくなってしまう医師もいる。でも、そこでめげずに次に何をするかを考える。血管を破いても修復する技術があればいい。私は、ロータブレーター治療で患者さんを亡くしたことは一度もなく、緊急手術になった例も20年間で2例のみです。もちろん死亡していませんが」

 心臓カテーテル治療は局所麻酔で行うため、体にカテーテルが入っている間、本人には意識があり会話もできる。術後の痛みもなく、管を入れた小さな傷がテープで止められているだけなので、心臓の手術を受けたという実感もないかもしれない。米国にいた12年間を含め、手掛けたロータブレーター治療の症例数は約5000例。世界トップクラスとされるが、三角氏は「ただ、コツコツとやってきただけですよ」と謙遜した。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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